ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
岸博幸のクリエイティブ国富論

原発再稼働で軽視される行政プロセス

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第182回】 2012年4月20日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 大飯原発の再稼働に向けた野田首相以下の四閣僚による協議(四大臣会合)で、議事録が作成されていなかったことが明らかになりました。民主党政権による行政プロセス軽視の典型ですが、議事録の問題に限定せず、原発再稼働に向けた政府の対応の全体が杜撰な行政プロセスになっていることに留意すべきです。

法的根拠を無視した暴走

 そもそも今回の原発再稼働に向けた政府の対応は、中身の点で多くの問題があります。

 例えば、新たな安全基準がわずか3日で作成・決定されたことも論外ですが、その内容は昨年3月と5月に原子力安全保安院が電力会社に指示した“緊急安全対策”を多少詳しくした程度のものでしかありません。また、関西電力の工程表もわずか3日で作成されましたが、これも基本的には“緊急安全対策”への対応の焼き直しに過ぎず、免震棟の建設など過酷事故対策への対応に数年かかるなど不十分なままです。

 このように中身の点でも問題が多いのですが、原発再稼働に向けた政府の対応が法定されている行政プロセスを無視していることは、ある意味でそれ以上に問題と言わざるを得ません。

 法律上、原発再稼働を決める権限は誰にあるのでしょうか。経済産業省設置法、内閣府設置法、原子力委員会及び原子力安全委員会設置法、原子炉等規制法などの関連法令を見れば明らかですが、法律上は経産大臣にあります。

 これに対して、原発再稼働に向けて頻繁に開催された四大臣会合には何の法律上の根拠や権限もありません。即ち、そもそも四大臣会合の場で原発再稼働に関して何かを意思決定すること自体がおかしいのであり、本来の行政プロセスとしては、新たな安全基準の決定、関電の工程表の確認、そして大飯原発の再稼働の是非の決定などは、経産大臣が1人で行うべきなのです。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


岸博幸のクリエイティブ国富論

メディアや文化などソフトパワーを総称する「クリエイティブ産業」なる新概念が注目を集めている。その正しい捉え方と実践法を経済政策の論客が説く。

「岸博幸のクリエイティブ国富論」

⇒バックナンバー一覧