大飯原発の再稼働に向けた野田首相以下の四閣僚による協議(四大臣会合)で、議事録が作成されていなかったことが明らかになりました。民主党政権による行政プロセス軽視の典型ですが、議事録の問題に限定せず、原発再稼働に向けた政府の対応の全体が杜撰な行政プロセスになっていることに留意すべきです。

法的根拠を無視した暴走

 そもそも今回の原発再稼働に向けた政府の対応は、中身の点で多くの問題があります。

 例えば、新たな安全基準がわずか3日で作成・決定されたことも論外ですが、その内容は昨年3月と5月に原子力安全保安院が電力会社に指示した“緊急安全対策”を多少詳しくした程度のものでしかありません。また、関西電力の工程表もわずか3日で作成されましたが、これも基本的には“緊急安全対策”への対応の焼き直しに過ぎず、免震棟の建設など過酷事故対策への対応に数年かかるなど不十分なままです。

 このように中身の点でも問題が多いのですが、原発再稼働に向けた政府の対応が法定されている行政プロセスを無視していることは、ある意味でそれ以上に問題と言わざるを得ません。

 法律上、原発再稼働を決める権限は誰にあるのでしょうか。経済産業省設置法、内閣府設置法、原子力委員会及び原子力安全委員会設置法、原子炉等規制法などの関連法令を見れば明らかですが、法律上は経産大臣にあります。

 これに対して、原発再稼働に向けて頻繁に開催された四大臣会合には何の法律上の根拠や権限もありません。即ち、そもそも四大臣会合の場で原発再稼働に関して何かを意思決定すること自体がおかしいのであり、本来の行政プロセスとしては、新たな安全基準の決定、関電の工程表の確認、そして大飯原発の再稼働の是非の決定などは、経産大臣が1人で行うべきなのです。