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相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記

力わざだけでは猛威をふるう土砂災害に勝てない!
真の防災対策は悲鳴を上げる「森林の再生」にあり

相川俊英 [ジャーナリスト]
【第113回】 2014年10月14日
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続発する大規模な土砂災害
抜け落ちている森林再生の議論

 日本列島で、台風や集中豪雨に伴う大規模な土砂災害が頻発している。広島市や伊豆大島など多数の人命が失われる悲劇も相次いでいる。異常気象による未曾有の大雨がもたらした天災である。各地で続発する土砂災害に対し、国土交通省はソフトとハードの両面での対策を講じ、防災・減災を懸命に進めている。

 ソフト面では、観測体制の強化やハザードマップの作成といった情報収集と伝達、さらには住民の避難体制に関するものなど。また、土砂災害警戒区域の指定による危険箇所への居住制限などもある。一方、ハード面では砂防堰堤など構造物の設置による防災・減災対策である。

 だが、土砂災害対策で重要なものが抜け落ちているように思えてならない。荒れ果てた森林の再生である。

 日本は戦後、スギやヒノキといった針葉樹の植林を国策として打ち出した。木材需要の増加を見越してのことで、補助金を出して山主に植林を推奨したのである。その結果、日本の森林は大きく変貌した。1950年代までは8対2で広葉樹林が多かったが、現在は6対4に変わっている。針葉樹林が全国各地に広がったのである。日本の森林面積は約2508万へクタール(2012年)あり、このうち人工林は約1029万へクタールにのぼる。

 ところが、木材価格が1980年をピークに暴落し、右肩下がりとなる。安い輸入材が大量に入り、日本の林業は大打撃を受けたのである。山村での生活に見切りをつけ、都会に流出する人が続出した。こうして森林の多く(広葉樹林も含む)が、間伐されないまま放置されるようになった。全体の約8割がそうした状態だと言われている。山に入って手入れをする人、そしてできる人が激減してしまったからだ。

 間伐されない人工林は、山に様々な負荷を与えることになった。森林の中の木の密度が高いため、上部に密集する葉っぱに遮られて日の光が森林の中に入らない。 それで下草が生えず、土壌がむき出しとなり、雨水を浸透しにくくなった。要するに、本来の森林が持つ保水力を低下させてしまったのである。

 間伐されない人工林が山に与えている負荷は、それだけではなかった。森林研究の第一人者である東大大学院の蔵治光一郎・准教授によると、山の地表を削り取るメカニズムができ上がってしまっているという。それはこういうことだった。

 木々の間隔があいている通常の森林の場合、雨粒の多くはそのまま山の地表に降り、土に吸収される。ところが、木々が密集した人工林では、雨粒が木々の上部の葉っぱに溜まることになる。日の光が遮られるのと同じ原理である。
上部に溜った雨粒は少しずつ集まり、ある程度の塊となって下に落ちる。葉っぱが雨粒の重みに耐えられなくなるからだ。森林の高いところから、大きくなった雨粒が落下するのである。通常の雨粒よりも、地表に与える衝撃度は巨大なものとなる。

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相川俊英 [ジャーナリスト]

1956年群馬県生まれ。放送記者を経て、1992年にフリージャーナリストに。地方自治体の取材で全国を歩き回る。97年から『週刊ダイヤモンド』委嘱記者となり、99年からテレビの報道番組『サンデープロジェクト』の特集担当レポーター。主な著書に『長野オリンピック騒動記』など。


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国政の混乱が極まるなか、事態打開の切り札として期待される「地方分権」。だが、肝心の地方自治の最前線は、ボイコット市長や勘違い知事の暴走、貴族化する議員など、お寒いエピソードのオンパレードだ。これでは地方発日本再生も夢のまた夢。ベテラン・ジャーナリストが警鐘を鳴らす!

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