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クラウド時代にIT部門は不要なのか?

――IT投資動向調査から見えてきた課題

内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]
【第37回】 2015年3月6日
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IT技術が大きな転換期を迎えているなか、社内のIT部門の存在意義を問い直す議論も活発化しつつある。そこで、最新の調査では、IT部門の担うべき役割に関する調査項目を初めて追加した。その結果、将来のIT部門の役割は「縮小する」と見ている回答者が多いことが明らかとなった。

縮小傾向が示唆されたIT部門の役割

 ITRが14年間継続して行っている「IT投資動向調査結果」では国内ユーザー企業のITに対する取組みを定点観測的に追跡しており、投資の増減傾向や注力分野については本コラム前回『好調な企業ほど攻めのIT投資に積極的「企業間デジタルデバイド」が顕著に』にて述べた。

 最新の調査では、IT部門の担うべき役割に関する調査項目を初めて追加したが、それは多くの企業でIT部門の組織形態や業務領域、そしてIT部門に所属するスタッフの人材像や必要とするスキルを見直そうとする動きがある状況を鑑みてのことである。

 まず、自社のIT部門が「現在担っている役割」と、「3~5年後に担うべき役割」をそれぞれ問うた結果を集計してみると、全体的に担うべき役割が縮小・分散する傾向がみられた(図1)

 これは、既存システムの維持運用に加えて、グループやグローバルへの業務領域の拡大、セキュリティ対策やコンプライアンスへの対応、数多い開発・保守案件の遂行など実施しなければならない業務は増加する傾向にあるものの、人材は必ずしも増員されるわけではなく、抱えている業務で手一杯という状況から何とか脱したいという意向を読み取ることができる。

 特に、現在のIT部門が担っている中心的な役割である「システムの機能やパフォーマンスの改善」「システムの安定稼働/障害対応」「セキュリティ管理」といった「従来型機能」に位置づけられる項目は、調査時点では6~7割の企業でIT部門が担っているが、3~5年後にもIT部門が担うべきだと考えている企業の割合は3~4割と大きく落ち込んでいる。

 ITをビジネスに利用する以上、安定性や安全性、パフォーマンスに関わる要求水準が今後低下するとは考えにくいため、その役割自体の重要度が下がるとは考えにくい。したがって、こうした「従来型機能」は中長期的にはクラウドの活用、専用性に優れた外部の事業者へのアウトソーシング、システムによる自動化などを推進していくことで社内の業務負荷を軽減したいという意向が反映されていると考えられる。

 一方、今後に向けて拡大が見込まれるのは「ビジネスイノベーションの促進」「新規市場参入のための戦略・技術の検討」など「ビジネス戦略」に関わる役割である。現状では、これらの役割をIT部門が担っている企業は軒並み15%台程度にとどまっているが、将来に担うべき役割と位置づける企業の割合はいずれもわずかながら上昇している。一部とはいえ、攻めの組織に転じたいと考えるIT部門の責任者が存在することを物語っている。

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内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]

うちやま・さとし/大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストととして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。現在は大手ユーザー企業のIT戦略立案・実行のアドバイスおよびコンサルティングを提供する。


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日々進化するIT技術をどうやって経営にいかしていくか。この課題を、独立系ITアナリストが事例を交えて再検証する。クラウド、セキュリティ、仮想化、ビッグデータ、デジタルマーケティング、グローバル業務基盤…。毎回テーマを決め、技術視点でなく経営者の視点で解き明かす。

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