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どんな少子化対策が効くかは
国によって全く異なる
少子化対策として、どんな政策が有効かは、国によって違います。
昨年、世界の子育て支援策について、比較研究を行いましたが、やはり効果があったものはその国の文化によって異なっています。フランスのやり方、英国のやり方、オーストラリアのやり方、ベルギーのやり方と、全て違う。
例えば、英国で成功したのは、若いカップルの貧困対策でした。同国は元々、出産は個人の問題として、少子化対策は行いません。一方で、労働党・ブレア政権は子どもの貧困問題を重要視しました。親の貧困によって子どもたちが苦しむという観点から、とにかく若い人たちが働くようにした。労働支援プログラムをきっちり組み、それについてこようとしない人たちには社会保障も打ち切る、という徹底したものです。
そして、若い人たちがきちんと働くようになった結果、5年間で出生率がシャープに上がり、1.9まで回復しました。
「子ども手当」のような形でお金を渡す、というのはオーストラリア方式です。ただし、同国はお金を渡す代わりに「3人、産んでください」と言っています。これは実際に財務大臣が議会で発言したのですが、「母親のために1人、父親のために1人、国のために1人、産んでください」と。その結果、出生率は1.9まで上がりました。
子どもを増やすというのは、それくらいやらないと駄目なのです。はっきり国が姿勢を示して、どうすればいいかを言わないと、国民は動かない。
重要なのは、これらの国々では、妊産期に関する正確な国民の認知という前提があるからこそ、政策は違っても出生率にてきめんの効果が出た、ということです。
例えば、日本で英国と同じ政策をやれば効くのか? 英国では、先述のように7割の人が「36歳を境として女性の妊娠力が急に落ちる」と分かっています。ですから、今まではお金の問題で子どもをつくれなかった人たちが、「お金ができたのなら、早く産もう」となるわけです。しかし、7割の人がそのことを知らない日本では、お金が入っても「このお金でちょっと2人の時間を楽しんでから子どもを持とう」となってしまう。
つまり重要なのは、根本的な問題の解決を図ることなのです。そうでなければ、いくら政策を打ってもシャープには効きません。
フランスについては、私の出産当時、税制問題ばかりが取り上げられていました。「子どもの多い家庭を優遇する、素晴らしい家族税制があるから、出生率が高いのだ」と。しかし実は、そうした同国の税制は、少子化を経験する前から存在するのです。