ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
シリーズ・日本のアジェンダ 崖っぷち「人口減少日本」の処方箋

政府の「女性活躍推進」が「少子化推進」となってしまう理由(下)

──天野馨南子・ニッセイ基礎研究所研究員

ダイヤモンド・オンライン編集部
【第4回】 2015年4月17日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

>>(上)より続く

どんな少子化対策が効くかは
国によって全く異なる

 少子化対策として、どんな政策が有効かは、国によって違います。

 昨年、世界の子育て支援策について、比較研究を行いましたが、やはり効果があったものはその国の文化によって異なっています。フランスのやり方、英国のやり方、オーストラリアのやり方、ベルギーのやり方と、全て違う。

 例えば、英国で成功したのは、若いカップルの貧困対策でした。同国は元々、出産は個人の問題として、少子化対策は行いません。一方で、労働党・ブレア政権は子どもの貧困問題を重要視しました。親の貧困によって子どもたちが苦しむという観点から、とにかく若い人たちが働くようにした。労働支援プログラムをきっちり組み、それについてこようとしない人たちには社会保障も打ち切る、という徹底したものです。

 そして、若い人たちがきちんと働くようになった結果、5年間で出生率がシャープに上がり、1.9まで回復しました。

 「子ども手当」のような形でお金を渡す、というのはオーストラリア方式です。ただし、同国はお金を渡す代わりに「3人、産んでください」と言っています。これは実際に財務大臣が議会で発言したのですが、「母親のために1人、父親のために1人、国のために1人、産んでください」と。その結果、出生率は1.9まで上がりました。

 子どもを増やすというのは、それくらいやらないと駄目なのです。はっきり国が姿勢を示して、どうすればいいかを言わないと、国民は動かない。

 重要なのは、これらの国々では、妊産期に関する正確な国民の認知という前提があるからこそ、政策は違っても出生率にてきめんの効果が出た、ということです。

 例えば、日本で英国と同じ政策をやれば効くのか? 英国では、先述のように7割の人が「36歳を境として女性の妊娠力が急に落ちる」と分かっています。ですから、今まではお金の問題で子どもをつくれなかった人たちが、「お金ができたのなら、早く産もう」となるわけです。しかし、7割の人がそのことを知らない日本では、お金が入っても「このお金でちょっと2人の時間を楽しんでから子どもを持とう」となってしまう。

 つまり重要なのは、根本的な問題の解決を図ることなのです。そうでなければ、いくら政策を打ってもシャープには効きません。

 フランスについては、私の出産当時、税制問題ばかりが取り上げられていました。「子どもの多い家庭を優遇する、素晴らしい家族税制があるから、出生率が高いのだ」と。しかし実は、そうした同国の税制は、少子化を経験する前から存在するのです。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事


シリーズ・日本のアジェンダ 崖っぷち「人口減少日本」の処方箋

「日本で人口減少が始まった」と言われて久しい。先の国勢調査によると、足もとの日本の人口は約1億2806万人。国立社会保障・人口問題研究所の中位推計によると、この数が2030年に1億1522万人、さらに2060年には8674万人まで減ると予測されている。人口は国の国力を推し量る上で最も重要な指標だけに、今の日本の状況はまさに「崖っぷち」と言える。世間では、少子化、高齢化などの現象について、様々な角度から分析が行われている。しかし、全ての国民が人口減少について、正しく理解しているわけではない。なぜ人口減少が起きるのか。その真のリスクとは何なのか。我々が直面する近未来の「途方もない変化」についてリサーチする。

「シリーズ・日本のアジェンダ 崖っぷち「人口減少日本」の処方箋」

⇒バックナンバー一覧