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連合も調査に乗り出した
「マタハラ現場」の悲惨な実態(上)

――ジャーナリスト・小林美希

小林美希 [労働経済ジャーナリスト]
2015年3月12日
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出血しても激務をやめられず――。
尊い命を守れなかったアパレル店員の悲痛

妊娠・出産で職場にいずらくなり、悩む女性は多い
Photo:naka-Fotolia.com

 「妊娠がわかってからも立ちっぱなしの仕事で、常にお腹が張っていた」

 アパレル業界で働く岡本絢子さん(仮名・27歳)は、後悔の念にかられている。それというのも、無理して働いた結果、流産してしまったからだ。

 デパートにテナントとして入っている店舗で洋服の販売をしていた岡本さんは、店で唯一の正社員で店長だった。アルバイトや契約社員のシフトを組み、急な休みで穴が空けば自分が入って代替していた。休みは週1日とれればいいほうだった。

 妊娠がわかってからも、業務内容は変わらない。平日昼間など顧客が少ない時間帯は1人で店舗に立つことが多く、休憩もままならない。夕方は仕事帰りに買いものに来る顧客が多く、やはり持ち場を離れられない。いつも、お腹はカチカチの状態だった。

 妊娠9週頃に出血があったが、すぐに産婦人科にかかれなかった。初めての妊娠で、出血にどんな意味があるのかもわからず「そのうち、おさまるだろう」と我慢してしまった。どんどん出血が始まってやっと“異常事態”に気づき受診すると、「切迫流産」(流産しかかる状態)と診断され、医師から絶対安静を命じられた。

 そのときになって初めて会社側に妊娠の報告をし、1週間ほど休むと出血はおさまり、再び職場に戻った。しかし、アルバイトが急に辞めるなどして、シフトに入る時間が増え、連日デパートが閉店する夜9時まで働き、その後は売り上げの確認、商品の発注業務などの残業をこなすため、終電近くまで帰宅できなかった。みるみるうちにまたお腹が張ってきた。

 本社に他の店舗からの応援を頼んだが、人手が回らない。一時的に本社で事務作業の仕事に回してもらえないか、それが無理でも誰か本社から応援に来てもらい業務の負担を軽減してもらえないかと頼んでも、「自分で調整して」と言われた。

 その2週間後、立っていられないほど下腹部の激痛を感じ、大量出血が始まった。その出血と共に、お腹のなかに宿した命は消えてしまった――。

 就労妊婦と非就労妊婦との間の流産率には、統計的な有意差があることがわかっている。以前より筆者が注目しているのは、大阪府松原市にある阪南中央病院による調査だ。1970年代から同病院に健診に訪れた妊婦全員について調べた蓄積があり、直近の調査では就労妊婦の流産率は15.3%で、非就労妊婦と比べ4.5ポイント高くなっている。

 また、帝京大学医学部衛生学公衆衛生学教室の野村恭子准教授は、長時間労働と妊娠異常の関係について研究を行っている。野村氏の調査は、2009年から2011年に医大を卒業した女性医師939人のデータを解析している。

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小林美希 [労働経済ジャーナリスト]

こばやし・みき/労働経済ジャーナリスト。1975年生まれ。株式新聞社、毎日新聞エコノミスト編集部を経て、2007年よりフリー。労働問題を幅広く取材。『ルポ 正社員になりたい~娘、息子の悲惨な職場』(影書房)『ルポ “正社員”の若者たち~就職氷河期世代を追う』(岩波書店)『看護崩壊』(アスキー新書)『ルポ 職場流産~雇用崩壊後の妊娠・出産・育児』(岩波書店)『ルポ産ませない社会』(河出書房新社)』など著書多数。


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