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撤退するアメリカと「無秩序」の世紀
【第3回】 2015年4月28日
著者・コラム紹介バックナンバー
ブレット・スティーブンズ [WSJ外交問題コラムニスト・論説欄副編集長],藤原朝子 [学習院女子大学]

アメリカが安部首相の
靖国参拝を引き止める本当の理由

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米バイデン副大統領は一時間に渡り、安部首相に靖国参拝を自粛するよう説得を続けた。アメリカが首相の靖国参拝を引き止める本当の理由とは?『撤退するアメリカと「無秩序」の世紀』の著者でもある、ピューリッツァー賞受賞・WSJコラムニストが分析する。

安倍首相の靖国参拝を
アメリカはなぜ恐れたのか

 アメリカがドイツや日本、韓国といった国に核の傘を与えているのは、これらの国が自ら核を獲得する必要性を感じないようにするためだ。また、それだからアメリカは最近まで、同時に二つの大戦争を戦えるだけの軍事力を維持してきた。

 それはアメリカ軍が中東に展開していても、日本などの国の安全保障が脅かされることはないと安心させるためだった。こうした責任を担うコストと、その履行に伴うリスクを引き受けているからこそ、アメリカは同盟国の戦略的選択肢に甚大な影響力を持つ。

 その影響力は一九九一年の湾岸戦争時に効果を発揮した。このときイラクのサダム・フセインは、イスラエルにスカッドミサイルを撃ち込んだが、ジョージ・W・H・ブッシュ大統領はイスラエルを説得して、イラクに対する報復攻撃を思いとどまらせた。

 そのためにアメリカの戦闘機の展開計画は変更を余儀なくされ、特殊部隊はイラクの移動式ミサイル発射装置を破壊しなければならなかった。つまりアメリカ兵の命を危険にさらす必要があった。しかしそのおかげで、アメリカはイスラエルを防衛する明確な意志があることをイスラエルのイツハク・シャミル首相に納得させ、イスラエルとの同盟関係を維持するという、より大きな国益を守ることができた。

 オバマもいま、イスラエルにイラン攻撃を思いとどまるよう説得しているが、イスラエルの指導者たちはその前提となる約束が軽視されているように感じている。そのためイスラエルは単独で行動を起こす誘惑に駆られている。

 波紋が及んでいるのは中東だけではない。

 二〇一三年一二月、ジョー・バイデン副大統領は日本の安倍晋三首相と一時間ほど電話で話し、第二次世界大戦の戦犯を含む二五〇万人の戦死者をまつる靖国神社への参拝を思いとどまるよう説得を試みたが、失敗に終わった。

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ブレット・スティーブンズ [WSJ外交問題コラムニスト・論説欄副編集長]

 

ウォールストリート・ジャーナル紙外交問題コラムニストおよび論説欄副編集長。2013年にピューリッツァー賞(論説部門)を受賞。ニューヨークで生まれメキシコで育つ。シカゴ大学(学士号)とロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(修士号)で学ぶ。エルサレム・ポスト紙編集主幹(2002~2004年)。家族と共にニューヨーク在住。

 

 

藤原朝子[学習院女子大学]

 

学習院女子大学非常勤講師。フォーリン・アフェアーズ日本語版、ロイター通信などで翻訳を担当。訳書に『撤退するアメリカと「無秩序」の世紀』(ダイヤモンド社)、『ハーバードビジネススクールが教えてくれたこと、教えてくれなかったこと』(CCCメディアハウス)、『未来のイノベーターはどう育つのか ―― 子供の可能性を伸ばすもの・つぶすもの』(英治出版)など。

 


撤退するアメリカと「無秩序」の世紀

イスラム国、クリミア半島、アフガニスタン、尖閣諸島……
世界各地で頻発する危機の背景にはアメリカの驚くべき方針転換があります。
いま世界で何が起きているのでしょうか。そして、日本はどう対処すべきでしょうか。ピューリッツァー賞受賞のWSJコラムニストが、歴史とデータから世界の秩序の崩壊を丹念に分析していきます。
アメリカがもしも「世界の警察」の役割を放棄したとき、中東・ロシア・中国はいかなる行動に出るでしょうか。日本もまた世界情勢から無関係でないことを、イスラム国による後藤健二さん・湯川遥菜さん殺害で思い知った今、本連載で世界秩序の行く末を占います。

「撤退するアメリカと「無秩序」の世紀」

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