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撤退するアメリカと「無秩序」の世紀
【第2回】 2015年4月27日
著者・コラム紹介バックナンバー
ブレット・スティーブンズ [WSJ外交問題コラムニスト・論説欄副編集長],藤原朝子 [学習院女子大学]

戦後70年、自由民主主義の終焉は近い
日米安保は尖閣諸島で守られるのか?

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オバマが「われわれは世界の警察官であるべきではない」と語り、アメリカ人の半数が「よその国のことには口出しするべきではない」と考え始めている。撤退するアメリカがもたらしたクリミア、尖閣諸島をはじめとする世界的混乱を『撤退するアメリカと「無秩序」の世紀』の著者でもある、ピューリッツァー賞受賞・WSJコラムニストが分析する。

「自由民主主義」がもたらす平和とは
ただの幻想だったのか

 サミュエル・ハンチントンは一九九〇年代初め、「アメリカ・モデルが強さと成功を体現しなくなり、勝利モデルとみなされなくなったなら、何が起きるのか」と問いかけた。長引く戦争、財政の悪化、政治の麻痺という泥沼にはまったアメリカは、世界の国にとって必ずしも最高の手本ではないようだ。

 イランのマフムード・アハマディネジャド大統領は二〇〇六年、ジョージ・W・ブッシュ大統領に宛てた書簡で、「物事の本質が見える人間には、すでに自由民主主義体制のイデオロギーと思想が破綻して崩壊する音が聞こえる」と書いた。「世界じゅうで人々は最大の中心すなわち全能の神に向かいつつある」。

 アメリカが金融危機のまっただなかにあった二〇〇八年、旧ソ連の諜報機関KGBの元工作員イーゴリ・パナーリンが、アメリカは二〇一〇年までに六つの国に分裂すると予測していたことが明らかになった。その場合、「ロシアがアラスカの領有権を主張するのはまっとうなことだろう」と、パナーリンはさらりと述べている。

 アメリカ議会の予算審議がまとまらず、連邦政府が一部閉鎖された二〇一三年九月には、中国の国営メディアが、「脱アメリカの世界構築を検討すべきときがきたのかもしれない」と指摘して、大きな議論を巻き起こした。

 一九二〇〜三〇年代も同じことがあった。「西欧列強は、自らの勝利が自らのイメージする時代の到来をもたらすことを願っていた」と、歴史家のノーマン・デービスは書いている。

 デービスによると、一九一四年のヨーロッパには一九の王国と三つの共和国があった。それが一九一九年までに王国は一四、共和国は一六になっていた。しかし民主主義は根づかなかった。「毎年のように、どこかの国で民主的な憲法が独裁者によって踏みにじられた。理由は一つではないが、西欧列強に自らのつくり上げた体制を防衛する能力がなかったことは確かだ」

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ブレット・スティーブンズ [WSJ外交問題コラムニスト・論説欄副編集長]

 

ウォールストリート・ジャーナル紙外交問題コラムニストおよび論説欄副編集長。2013年にピューリッツァー賞(論説部門)を受賞。ニューヨークで生まれメキシコで育つ。シカゴ大学(学士号)とロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(修士号)で学ぶ。エルサレム・ポスト紙編集主幹(2002~2004年)。家族と共にニューヨーク在住。

 

 

藤原朝子[学習院女子大学]

 

学習院女子大学非常勤講師。フォーリン・アフェアーズ日本語版、ロイター通信などで翻訳を担当。訳書に『撤退するアメリカと「無秩序」の世紀』(ダイヤモンド社)、『ハーバードビジネススクールが教えてくれたこと、教えてくれなかったこと』(CCCメディアハウス)、『未来のイノベーターはどう育つのか ―― 子供の可能性を伸ばすもの・つぶすもの』(英治出版)など。

 


撤退するアメリカと「無秩序」の世紀

イスラム国、クリミア半島、アフガニスタン、尖閣諸島……
世界各地で頻発する危機の背景にはアメリカの驚くべき方針転換があります。
いま世界で何が起きているのでしょうか。そして、日本はどう対処すべきでしょうか。ピューリッツァー賞受賞のWSJコラムニストが、歴史とデータから世界の秩序の崩壊を丹念に分析していきます。
アメリカがもしも「世界の警察」の役割を放棄したとき、中東・ロシア・中国はいかなる行動に出るでしょうか。日本もまた世界情勢から無関係でないことを、イスラム国による後藤健二さん・湯川遥菜さん殺害で思い知った今、本連載で世界秩序の行く末を占います。

「撤退するアメリカと「無秩序」の世紀」

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