欧州がしたたかに取り込む<br />中国人もかすむ“本物”の爆買い英国・ナイツブリッジエリアにあるホテルの駐車場に並んだスーパーカー。さながら超高級車の見本市だ Photo:Carl Court/gettyimages

 東京・銀座4丁目の交差点近くにある山野楽器の上層階の外壁に、中国の準大手銀行、交通銀行の大きなクレジットカード広告が張られている。

 このカードを使って外国で買い物をすると、ポイントが10倍付与されるという説明なのだが、興味深いことにこの巨大広告には日本語が一文字も書かれていない。広告の対象が明らかに日本人ではなく中国人なのである。

 通りを挟んだ真向かいに、銀座三越の出入り口がある。同店は現在中国人客で大繁盛だ。中国人買い物客が出てきたときに、その目線の先になるようにこの広告は配置されているのだった。

 外国人客の急増で銀座らしさが失われたと嘆く声も最近よく聞く。それは悩ましい問題ではあるが、高齢化と人口減少で国内消費のパイは先行き顕著に縮小していく確率が高いだけに、ここは戦略的に需要を取り込んでいくべきだろう。

 欧州の観光都市は以前からそういった面では非常にしたたかだ。今の季節、フランス・パリのシャンゼリゼ通りに行けば、通りに面しているレストランやカフェの客層は中東系、東欧系、アジア系が圧倒的で、地元客はほとんど見かけない。彼らは「お上りさん価格」の店には行かず、一本路地を入った店か、観光客があまり来ないエリアでくつろいでいる。