「宅急便をアジアに」開花し始めたヤマトの挑戦沖縄を拠点にアジア地域にも空輸により、「翌日到着」を拡大させていく

 ヤマト運輸が3年前にまいた種が、今夏、開花し始めた。

 2012年、ヤマトは全日本空輸(ANA)と提携、沖縄県那覇市の沖縄国際物流ハブを拠点として、国際的な物流事業に乗り出した。「物を早く届ける」というヤマトのお家芸を海外にも展開しようともくろんだのだ。

 沖縄国際物流ハブのある那覇空港からアジア各国へは、深夜便が多く行き来している上、貨物の手続きの速度が速く利便性も高い。こうしたメリットを利用すれば実現可能と踏んだのだ。

 しかし、一般的に海外に素早く物を届けることに対するハードルは高い。何しろ空輸のコストは船の10倍ともいわれており、事実、日本の貿易量の99.7%は船によるものだ。

 多くの物流会社が航空貨物事業で失敗をしてきた歴史もあり、普通に考えれば船に太刀打ちすることは難しい。

 そこで、ヤマトが目を付けたのが、「高価格」かつ「速さ」が必要とされる“特別”な荷物だ。

 まず13年から、香港向けのクール宅急便事業をスタート。北海道で捕れた魚介類であれば、それまで3日ほどかかっていたものが翌日にはテーブルに並ぶとあって、香港の高級ホテルやレストランからの注文が相次いでいる。

 15年に入り、さらに対象エリアを拡大。3月には台湾、8月にはシンガポールにもクール便のサービスを始めたのだ。