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山田厚史の「世界かわら版」

「オスプレイ1機200億円」が問う
米中間での日本の立ち位置

山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]
【第92回】 2015年9月10日
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 防衛予算が概算要求で5兆円を超えた。財政再建が叫ばれるが、「積極的平和主義」の安倍政権は軍事費には寛容だ。驚くのは垂直離着陸輸送機オスプレイの値段。一機200億円を超える。「空飛ぶ国家資産」も、落ちたらパー。それを来年度まで17機揃えるという。

 増税という負担増と社会保障サービスの削減に邁進しているのに、軍備増強でいいのか。安倍政権は「中国の脅威」を盛んに煽る。国民の支持を得られない安保関連法案を通すためか、名指しして中国は敵国といわんばかりだ。オスプレイは「尖閣での有事対応」とも言われる。脅威を煽り、装備を増強すれば、その先に起こるのは何か。日本が進むべき道はその方向ではない。

 防衛予算を報ずる新聞に「生活保護世帯、また最多更新」というベタ記事が載っていた。少子高齢、グローバル化、拡大する格差。政治が取り組む最大の課題は、時代に翻弄される人々の暮らしを安定させることではないのか。

航続距離5倍で尖閣防衛を想定
中国との「軍拡のジレンマ」誘発の危険

 防衛省の発表では、オスプレイ予算は12機で1321億円となっていた。一機110億円。ずいぶん高いな、と驚いたら米国防総省から別の数字が出てきた。日本に売却するため予算化した金額は「17機・30億ドル」だという。1ドル120円で計算すると一機211億円になる。

 防衛省によると、米国で発表された値段には搭乗員の訓練費やスペアのエンジンなどが含まれている。機体だけなら一機110億円で収まる、という。

 軍事産業は、兵器そのものである「ハードウェア」からメンテナンス、教育訓練など「付帯サービス=ソフトウェア」に利益の源泉を広げている。米国の製造業は市場では生き残りが難しくなったが、兵器は特注品で競争原理にさらされない。軍産一体化は今も続き政府調達で独占的利益が確保される。ひとたびハードウェアを納入すれば「付帯サービス」で継続的な利益が付いてくる。

 オスプレイは事故が多く「未亡人製造機」とも揶揄された。水平飛行から着陸時など垂直飛行に切り替えるときに浮力を失う。操縦が難しいため高度な訓練が必要とされ、ここにも利益の源泉がある。

 ベトナム戦争の頃から使ってきたヘリコプターCH46の後継として米軍基地に配備された。オスプレイは時速500キロで飛びCH46の2倍の速さ、航続距離は3900キロで5倍。行動半径は沖縄から朝鮮半島、南シナ海まで広がるという。

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山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]

やまだ あつし/1971年朝日新聞入社。青森・千葉支局員を経て経済記者。大蔵省、外務省、自動車業界、金融証券業界など担当。ロンドン特派員として東欧の市場経済化、EC市場統合などを取材、93年から編集委員。ハーバード大学ニーマンフェロー。朝日新聞特別編集委員(経済担当)として大蔵行政や金融業界の体質を問う記事を執筆。2000年からバンコク特派員。2012年からフリージャーナリスト。CS放送「朝日ニュースター」で、「パックインジャーナル」のコメンテーターなど務める。

 


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元朝日新聞編集員で、反骨のジャーナリスト山田厚史が、世界中で起こる政治・経済の森羅万象に鋭く切り込む。その独自の視点で、強者の論理の欺瞞や矛盾、市場原理の裏に潜む冷徹な打算を解き明かします。

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