今、欧米ではエリートビジネスマンの間でヨガが流行っている。ヨガと聞くと、女性が美容や健康目的でするもの、というイメージがあるかもしれない。だが、本来ヨガは心にも身体にも効く、多忙なビジネスマンにこそふさわしい鍛練法なのだ。
デポルターレクラブを経営し会員制のヨガスタジオ「デポルターレヨガ」を運営している竹下雄真さんは、パーソナルトレーナーとして多くの著名人の指導をしてきた。最新トレーニングのノウハウを知り尽くしている竹下さんが生み出したのは、ビジネスに効く「勝つ」ためのヨガ。ビジネスマンのためのすぐに役立つヨガを、この連載で紹介していく。

年収3000万円のエリートがヨガに夢中!?

6時、朝日が街を包む頃、広尾の閑静な住宅街の一角にあるヨガスタジオにビジネスマンが集まってきます。スーツ姿の彼らは、パワーブレックファストをするために集まったわけではありません。スーツを脱ぎ捨て、Tシャツやジャージなどに着替えた彼らが向かうのは、青々とした芝生が広がる中にあるウッドデッキ。そこでコーチの指導を受けながら、ヨガをするのです。

明るい日差しのなか、鳥の鳴き声や虫のやさしい音を聞きながらヨガでストレッチをしているうちに、感覚が研ぎ澄まされていくのが分かります。そして一時間をかけて身体と心をほぐした後、彼らはスーツに着替えて、戦場に向かいます。

彼らの職業は外資系の金融機関に勤めるビジネスマンや、個人事業家や投資家。金融市場は朝8時に開くので、朝6時にヨガをしてから出社しているのです。

彼らの推定年収は3000万円以上。いわゆるエリートです。なかには年収1億円を超えるような事業家もいます。エリートビジネスマンが今、ジョギングではなく、ヨガにハマっているのです。

ヒクソン・グレイシーが無敗だったのはヨガのおかげ

無敗の帝王と呼ばれる柔術家のヒクソン・グレイシーが、トレーニングにヨガを取り入れていたのは有名な話です。毎日、裏庭やビーチでヨガをしていたといいます。ヒクソンが座禅を組み、お腹をベコッとへこませながら呼吸をしている映像を観たことがある方もいるでしょう。彼はヨガの呼吸法を実践し、深い腹式呼吸や速いペースの呼吸などを使い分けています。この呼吸法で集中力を高め、持久力を強化し、脳も活性化したのでしょう。体の動きもしなやかです。

ヒクソンは「一番難しいのは心を鍛えることだ。どんなに実力があっても、心が弱いと勝てない」とメンタルの重要性を説いています。ヨガで心を鍛えたから、400戦も不敗の成績を残せたのでしょう。

現在、アメリカではヨガの効果を見直す動きが出てきています。野球やサッカー、ホッケー、バスケット、アメリカンフットボールの選手たちがトレーニングにヨガを取り入れているのです。それは身体が柔軟になるという理由だけではありません。ヨガは「メンタルのリセット」をできるのが最大の効果なのです。 

ヨガは「負けた日の翌日」に効く

私たちのスタジオでも、プロ野球の投手がヨガを取り入れるようになってきました。彼らはだいたい一週間に一回登板するのですが、勝ったときはいいけれども、打ち込まれて負けてしまったときがキツイ。次の登板まで落ち込んだ気持ちを引きずる選手もいます。

「プロの選手ならメンタルトレーニングをやっているのでは?」と思うかもしれませんが、私の知る限り、日本ではそこまでのケアをしていません。だから自力で何とかしなければならないのです。

そうはいっても、気合で何とかなるものではない。悪いほうに考えてはいけないと思えば思うほど、「今度も負けたらどうしよう」という気持ちがムクムクと湧き上がってくるのが人間です。

そんなネガティブな気持ちをリセットできるのがヨガです。

試合で負けた翌日にヨガで自分の心と向かい合っているうちに、不思議と気持ちが落ち着いてきます。気持ちがリセットできるので、次の試合に向けていい準備ができる。ヨガは心を強くできる鍛練法なのです。

闘っているのはスポーツ選手だけではありません。ビジネスも戦場だといわれるように、ビジネスマンも日々神経をすり減らして、朝から晩まで戦い続けているでしょう。

IT企業のメッカ、シリコンバレーでは一流企業がヨガを研修プログラムに取り入れています。たとえば、グーグルではヨガの思想を取り入れたリーダーシッププログラムを開発して実行しています。アップルはステーィブ・ジョブズがヨガの影響を受けていたからか、ヨガのクラスを社内で行っているそうです。

 心を強くするには身体を鍛える事が有効で、心が弱っているときほど身体を鍛え、身体が疲れているときほど心に向き合う時間が大切です。その両方のバランスが取れているのがヨガ。だからこそ、日々戦う人が日々心身を整えるのにヨガをすることが効果的なのです。