エクササイズは科学だ。日々研究され、進化している。私たちは、それをあたかも流行の服を選ぶかのようにピックアップし、生活に採り入れる。エクササイズの流行り廃りを眺めるだけでも、面白いものだ。
テレビ朝日の人気番組『SmaSTATION!!』(2011年11月5日放送)内で、「女性1000人が選んだ最新エクササイズBEST10」が紹介された。ランキングは以下の通りである。
第1位:5秒でウエストが細くなる!「くびれッチ!」
第2位:「座るだけ!骨盤クッションダイエット」
第3位:フラフープを回して、すっきりダイエット!?「フープノティカ」
第4位:5分寝るだけでからだスッキリ!「骨盤に効く枕でダイエット」
第5位:1日5分で、小顔をキープ!「顔ヨガ」
第6位:話題の韓流エクササイズ!「キム・ジヨンのK-POPビクス」
第7位:特殊な靴でストレッチ「マスターストレッチ」
第8位:呼吸するだけで。代謝力アップ!「ロングブレス ダイエット」
第9位:1日5分、踏むだけでボディメイク!「踏むだけダイエット」
第10位:またぐだけで、姿勢がよくなる!「またぎシェイプ」
注目したいのは、10種中半分の5つに「◯◯だけ」という冠がついている点だ。それぞれの効果のほどはさることながら、この「◯◯だけ」に人気の要因があるのではないか、と考えるのである。
人は「◯◯するだけでいいんですよ!」と言われると弱い。行動へのハードルが俄然下がる。その主な理由として挙げられるのは、「簡単」「時間がかからない」「覚えやすい」「続けやすい」――これらの点だろう。注意して見てみると、世の中には「◯◯だけ」と銘打った商品が実に多いことに気づくはずだ。「押すだけ」「置くだけ」「チンするだけ」……。忙しい現代人は、この「◯◯だけ」に並々ならぬ関心を抱くらしい。
「◯◯だけエクササイズ」の中で最もお手軽なのが、普段使っているアイテムをチェンジするだけの置き換え型だ。代表的なのがトーニングシューズである。
トーニングシューズとは靴底が不安定な形状で、バランスをとりながら歩くことで運動効果が期待できる靴のこと。普段の靴を履き替えるだけで、時間も特別な動作も必要ない。矢野経済研究所の『スポーツシューズ市場に関する調査結果 2011』によると、「トーニングブームに沸く『ウォーキングシューズ』の2010年国内出荷市場規模は、数量ベースで前年比120.3%の692万足、金額ベースで同117.0%の431億8000万円とともに大きく伸長した」そうだ。
その「履くだけエクササイズ」人気は今後も継続(もはや定着?)しそうで、メーカー各社は春夏に向けた新作モデルを続々と発売している。
今季の特徴は、デザインのバリエーションだろう。従来のスポーツタイプに加え、ビジネスカジュアルスタイルのものやパンプスタイプ、サンダルタイプなど、見た目からはトーニングシューズであることが全くわからないほどファッション性に富んだものが発売され、各メーカーが他社との差別化を図ろうと力を注いでいることは、容易に想像できる。
最初の言葉を繰り返そう。エクササイズは科学だ。そして、科学でありビジネスである。1人でも多くの消費者に購入してもらうために、エクササイズはよりシンプルに、より生活に取り入れやすく“科学”されている。その結果生まれているのが数々の「◯◯だけエクササイズ」だ。
座るだけ、寝るだけ、踏むだけ――。色々あって実に楽しいではないか。私たち消費者は、それを面白がり、自分に合いそうなものを自由に選択すればいい。ナイスバディな未来が待っている……かもしれない。
(おおたゆうこ/5時から作家塾(R))