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あの人はなぜ、東大卒に勝てるのか
【第17回】 2015年10月13日
著者・コラム紹介バックナンバー
津田 久資

ネットが生み出すバカは
自らの無知に気づかない

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発想を広げたければ、情報を頭にインプットする段階から工夫が必要である。アイデアの素材となる情報は、総量が多いだけでは不十分であり、そこには「多様性」がなければならない。
そして知識の「多様性」を確保するためには、能動的な「情報収集」ではなく、受動的な「情報流入の習慣」が欠かせない。そのために、具体的にどんなことができるだろうか?

なぜ因数分解を学ばなければならないのか?

意外に思われるかもしれないが、「強制的な情報流入」の1つの完成形として考えられるのは、学校の義務教育である。
生徒たちがどんなことに興味を持っているのか、どんなことが得意なのかということは一切考慮しないまま、強制的にひと通りの知識を与えるのが現行の学校教育の特徴だ。

しばしば批判に晒されるものの、多様な情報を偏りなく頭にインプットできるという意味では、学校教育にも一定の意味があるのかもしれない。

教育論をテーマとしたあるテレビ番組を見ていると、ちょっと生意気そうな中学生が登場してこんな質問をしていた。

「僕はいま中学生なんですけど、学校で因数分解を習っているんですよ。あんなもの、何の役にも立たないですよね。どうして因数分解なんて勉強しなきゃいけないんですか?」

大人たちはどう答えたものか考えあぐね、答えに窮していた。そんな中で「ちょっと待って。俺には役に立っているよ」と断言した人がいた。北野武(ビートたけし)さんである。

そのころに彼が撮っていた新作映画では、大勢の人が銃で撃ち殺されるシーンがあったそうだ。それを撮影するときに、因数分解の知識が役に立ったというのである。

たとえば、6人を撃ち殺すのだとすれば、まず1人目については銃をかまえるところから実際に弾が当たるところまでを撮影し、最後に銃口から煙が上がるカットを入れる。すると、あとの5人については、銃口から煙が上がるカットを5回入れるだけで、6人を撃ち殺したということが表現できる。

これは要するに、6人を銃殺するという事象から「銃口から出る煙」という因数をくくり出している行為に等しい。自分がこういう発想ができるのは、中学のころに因数分解を勉強したからである――。

彼のそんな説明を聞いたスタジオは「(すごい、さすが世界の北野だ……)」という雰囲気に包まれ、質問した中学生も含めてみんなが黙り込んでしまった。

同じことを学んでも、ここまでの知恵に深められるかどうかは別問題であるにしろ、やはりどんな知識が何に役立つのかはわからない。その意味でも、学校の教室のように、「興味のない情報が強制的に入ってくる環境」を構築するのは意外に大切なのである。

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津田 久資

1958年生まれ。東京大学法学部およびカリフォルニア大学バークレー校経営大学院(MBA)卒業。博報堂、ボストン コンサルティング グループ、チューリッヒ保険で一貫して新商品開発、ブランディングを含むマーケティング戦略の立案・実行にあたる。 現在、AUGUST-A㈱代表として、各社のコンサルティング業務に従事。 また、アカデミーヒルズや大手企業内の研修において、論理思考・戦略思考の講座を多数担当。表層的なツール解説に終始することなく、ごくシンプルな言葉を使いながら、思考の本質に迫っていく研修スタイルに定評があり、のべ1万人以上の指導実績を持つ。 著書に、就活面接本の超定番書『ロジカル面接術』(WAC)のほか、『世界一わかりやすいロジカルシンキングの授業』(KADOKAWA)、『出来る人ほど情報収集はしないもの!』(WAC)、『超MBA式ロジカル問題解決』などがある。


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