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人民元の切り上げはなぜ大胆に行なわれないか?
中国が抱える“経済バランス急変”不安の背景

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第131回】 2010年6月29日
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 6月21日、中国の政策当局は突然、「人民元の為替レートを弾力化する」と発表した。市場では、「いよいよ人民元の切り上げが実現するのか」と評価する見方が多かった。

 しかし、中国の政策当局が実際に行なった変更策は、中国人民銀行が決める対ドルの為替レートの中間値に対して、上下0.5%の狭いレンジでの変動を容認するものだった。

 こうした措置に対して、為替市場の専門家からは、「G20の開催を控えて、米国を中心とする人民元切り上げ要請の圧力を一時的にかわすだけもの」との指摘も出ている。

中国は国際社会に同調したのか?
「人民元弾力化」の本当の狙い

 中国政府の慎重な姿勢の背景には、人民元レートは、対ユーロではすでにかなり強くなっていることに加えて、労働争議の多発などによって中国国内の賃金水準が上昇していることがある。

 賃金が上昇すると、当然、企業の生産コストを押し上げることになる。生産コストが上がると、中国製品の国際競争力を低下させることになる。そのため、賃金水準の上昇と、人民元の為替レートの引き上げが重なると、中国の輸出企業には大きな痛手になることが懸念される。

 中国政府が、人民元の切り上げに慎重な態度を取っているのは、むしろ当然のことと言えるだろう。

 問題は、中国政府が現在でも「過少評価」と批判される人民元の切り上げ圧力をいかにかわすかだ。欧米諸国からの圧力を一方的に無視し続けることは、良好な貿易関係を維持する意味からも、好ましくない。

 一方、中国の輸出企業のことを考えると、短期間に大きく切り上げることは難しい。それらの条件を考えると、欧米諸国からの圧力を勘案しつつ、少しずつ、時間をかけて人民元のレートを切り上げる手法以外に、現実的な方策が見当たらない。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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