経営 X 人事
なぜ職場で人が育たなくなったのか
【第11回】 2010年7月6日
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間杉俊彦 [ダイヤモンド社 人材開発編集部副部長]

即戦力化を求める企業と
成長を急ぐ若手との「すれ違い」解消法

 前回前々回で取り上げた「理不尽に厳しい新入社員研修」。それは企業にとっては、若手を早期に一人前に育てたいという意欲のあらわれでしょう。一方で、心ある若手の多くは、企業の思いと同じように「早く一人前になりたい」と強く願っています。そこでは思いが一致しているように見えますが、現実には、なかなかしっくりとしない。同床異夢というべきか、微妙にすれ違っていることが少なくありません。なぜ、このようなすれ違いが起こるのか。どうすれば、すれ違いが解消されるのか。今回は、それを考えてみましょう。(ダイヤモンド社人材開発事業部副部長・間杉俊彦)

企業と若手で
食い違う「成長」の定義

 言うまでもありませんが、人材の育成には時間がかかります。自分のことを振り返ってみても、そのことは明らかでしょう。多くの先輩や上司の手をわずらわせ、失敗を繰り返し、ちょっとした成功体験を励みにしながら、私たちは一人前になって行きました。

 バブル崩壊をはさんだ、この20年のあいだに、企業は「余裕」を失いました。人材育成を担当している方々は、人を育てるのには時間がかかるということを十分、理解しています。しかし、それが全社的なコンセンサスになっているかと言えば、そうではありません。

 特に経営者は待ってはくれません。いまは四半期決算が定着し、企業は3ヵ月ごとに活動のゴールを設定し、達成を競うという慌しさ。私は、「若手が育たない」という嘆き(もしくは人事への批判)の裏側には、この3ヵ月サイクルというモノサシがあるような気がしてなりません。つまり、「早く育てろ!」という上層部からのプレッシャーは、四半期決算をベースに企業組織が動いているからではないかと思うのです。

 しかし、人は3ヵ月では育ちません。企業は人事部門に対して、また当の若手社員に対して、かなり無茶な期待をしているのではないでしょうか。

 ここで大事なのは、「一定期間に、どのぐらい成長することを目標にするか」という定義であり、その社内での共有であり、また若手社員への明示です。期待値を共有しないままに、主観的判断から「育っていない」と責めたところで、あまり意味がありません。

 それは当の若手との関係にもあてはまります。私自身の経験ですが、ある新入社員に「自分が成長しているとは感じられないのですが」と相談されたことがあります。でも、私から見ると、「新人にしてはよくやっており、少しずつ成長している」のです。

 例えば、事業部が抱える商品について、お客様のところに行って一人で説明することができる。入社半年後にそれができるのなら、それはけっこう成長が早いと見なせます。しかし、その新人は、そうは思っていなかったのです。

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間杉俊彦 [ダイヤモンド社 人材開発編集部副部長]

1961年、東京都生まれ。1986年 、早稲田大学第一文学部文芸専修卒業、ダイヤモンド社入社。週刊ダイヤモンド編集部に配属され、以後、記者として流通、家電、化学・医薬品、運輸サービスなどの各業界を担当。2000年 週刊ダイヤモンド副編集長。2006年 人材開発編集部副部長。著書に『だから若手が辞めていく』(ダイヤモンド社刊)

 


なぜ職場で人が育たなくなったのか

「なぜ職場で人が育たなくなったか」をテーマに、その背景と要因を考える。そして研究者や識者の知恵を借りながら、「職場で人が育つ方法」を提示していく。

「なぜ職場で人が育たなくなったのか」

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