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野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて

マイナス金利は経済の縮小均衡を加速させる

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第54回】 2016年3月17日
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マイナス金利で企業の投資は増えるのか?

 マイナス金利は、投資を増大させるために導入したものとされる。しかし、実際には、インフレ率が下落したため、やむをえず導入せざるをえなかったのだ。

 インフレターゲットやマイナス金利は、もともと多くの問題を抱えている。最も大きな問題は、実質収益率がマイナスである投資も正当化し、経済の縮小均衡を加速させることである。

インフレターゲットの考え方と
日銀がマイナス金利を導入した理由

 マイナス金利を導入した日本銀行の意図は、次のようなものであろう。

 名目金利をマイナスにすることによって内外金利差を拡大して円安を導く。それによって物価上昇率を高める。

 ところで、企業が投資を正当化できる条件は、後で説明するように、実質収益率+製品価格の期待上昇率が、名目金利を上回ることである。

 したがって、製品価格と物価一般を同一視すれば、名目金利-期待インフレ率を低下させれば、投資が増えることになる。

 つまり、名目金利が低下しても期待インフレ率が上がっても、実質収益率が低い投資も正当化されることになり、採択できる投資は増える。

 この考えにおいては、デフレ下では、作ったものが値下がりしてしまうので企業は投資をしない。それに対してインフレ下では、作ったものの値段が上がっていくので投資をする、とされる。

 これがインフレターゲットの考えだ。

 この考えには後で述べるように大きな問題があるのだが、しかし、現実には、そうなる前に問題が生じている。

 物価上昇率が低下したのだ。そのため、投資が縮小しないように名目金利を下げざるをえなくなってきたのである。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて

アメリカが金融緩和を終了し、日欧は金融緩和を進める。こうした逆方向の金融政策が、いつまで続くのだろうか? それは何をもたらすか? その先にある新しい経済秩序はどのようなものか? 円安がさらに進むと、所得分配の歪みはさらに拡大することにならないか? 他方で、日本の産業構造の改革は遅々として進まない。新しい経済秩序を実現するには、何が必要か?

「野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて」

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