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日本に巣食う「学歴病」の正体

家庭の教育格差で人生を狂わされる苦学生たち

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第21回】 2016年6月7日
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親の収入や家庭不和は子どもの低学歴化に影響しがちなものだが、最近では高学歴な学生が就活で失敗し、社会で負け組になるケースも増えている(写真はイメージです)

 今回は、学歴を身につけるために不可欠な「家庭の力」について考えたい。「家庭の力」とは、親の収入や職業、家庭環境などを意味する。

 家庭の力が強いと、子どもは高校、大学受験などで一定の結果を出す傾向がある。一方で、親の収入が極端に低かったり、家庭内不和が繰り返されていたりする場合は、子どもの成績は伸び悩み、受験などにも悪影響を与えることがある。受験の失敗は、将来の就職に影響することもある。

 こうした話は以前から世間でよく聞かれるが、最近は新たな傾向も見られる。大学受験で一定の結果を出した学生でも、新卒時の就職で失敗することがあり得る。経済的に苦しい学生が増え、アルバイトを大量にこなし、学業どころではないことが理由なのかもしれない。

 こういう状況になると、「学歴」にしがみつく人がより一層増え、いわゆる「学歴病」が浸透することが考えられる。それが経済や社会を停滞させる。理由は本文で説明するが、そんな悪循環を見つめ直したい。


人は生まれながらにして不平等
「家庭の力の差」が生み出す学歴病

 2014年の夏、7年ぶりに実家に帰省した。中学生の頃の友人2人と会った。1人は県立高校(商業科)を卒業し、名古屋市内の自動車販売会社に就職した。現在に至るまでの約二十数年間、一貫して自動車のセールスをしている。この男性をA氏とする。

 もう1人は県立高校(普通科)を卒業し、関西の有名私立大学に進み、大手証券会社に就職したものの、社風になじめず退職。その後、金融機関に転職し、名古屋市内に本社を構える食料品メーカーに出向し、執行役員をしていた。この男性をB氏とする。

 2人とも息子がいる。2014年の春、共に大学に進学した。A氏の長男は同志社大学(人づてに聞いたところによると商学部らしい)、B氏の長男は京都大学の法学部だった。父親である彼らによると、2人とも小学生の頃から成績はよく、大学受験のときには「勉強をほとんどしないのに現役で合格した」のだという。酒を飲んでいたせいなのかもしれないが、2人は息子のことを誇らしげに語っていた。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


日本に巣食う「学歴病」の正体

 今の日本には、「学歴」を基に個人を評価することが「時代遅れ」という風潮がある。しかし、表には出にくくなっても、他者の学歴に対する興味や差別意識、自分の学歴に対する優越感、劣等感などは、今も昔も変わらずに人々の中に根付いている。

たとえば日本企業の中には、採用において人事が学生に学歴を聞かない、社員の配属、人事評価、昇格、あるいは左遷や降格に際しては仕事における個人の能力や成果のみを参考にする、という考え方が広まっている。しかし実際には、学歴によって選別しているとしか思えない不当な人事はまだまだ多く、学閥のようなコミュニティもいまだに根強く存在する。学歴が表向きに語られなくなったことで、「何を基準に人を判断すればいいのか」「自分は何を基準に判断されているのか」がわかりずらくなり、戸惑いも生まれている。こうした状況は、時として、人間関係における閉塞感やトラブルを招くこともある。

 これまでの取材で筆者は、学歴に関する実に多くのビジネスパーソンの悲喜こもごもを見て来た。学歴に翻弄される彼らの姿は、まるで「学歴病」に憑りつかれているようだった。学歴は「古くて新しい問題」なのだ。本連載では、そうした「学歴病」の正体を検証しながら、これからの時代に我々が意識すべき価値基準の在り方を考える。

「日本に巣食う「学歴病」の正体」

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