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「こつ」を身体に憶え込ませるには「ことば」が重要だった

『「こつ」と「スランプ」の研究──身体知の認知科学』

峰尾健一 [HONZ]
【第4回】 2016年7月1日
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ボウリングを999ゲームこなして得られた研究結果とは

 何やらそそられるタイトルだ。とらえどころのない「こつ」と「スランプ」の正体に、いかにして迫っていくのか。そもそも、それらは研究できるものなのか。期待と不安が入り混じるまま読み進めた先に待っていたのは、思わぬアプローチと意外な着地点だった。

 実は、「こつ」や「スランプ」についての話は本書の一面に過ぎない。研究対象とされているのはより広い領域、「身体知」である。

 身体知とは、シンプルにいえば「からだに根ざした知」だと著者は言う。自転車の漕ぎ方やゴルフのドライバーなどが分かりやすい例だ。いわゆる「暗黙知」との違いは明確に書かれていないが、読んだ限りでは、「からだで理解する」というニュアンスをより強調した言い方が「身体知」だと思われる。

 「からだに憶え込ませる」という言い回しがあるように、身体知は反復練習の中で徐々に感覚を掴むことで身につくもので、一見「ことば」は邪魔なように思える。自分の経験に照らし合わせてみても、うまくいかない時ほど脳内にことばが氾濫し、ああだこうだと考えていた気がするのだ。

 しかし本書で一貫して繰り出されるのは、「身体知を学ぶためにはことばが重要な役割を果たす」という主張である。

 とある学生が、自分を被験者にしてボウリングのスキルを学ぶプロセスを観察・分析した研究が紹介されている。約9ヵ月の間に204日ボウリング場に通い、なんと合計999回(!)ものゲームをこなしたのだそうだ。そしてボウリングをやった日には必ず、またそれ以外の日でも気づいたことがあればその都度、ノートにことばを書き綴った。

 何を意識しながら投げたのか、そこでどんな問題意識が生まれたのか、次はどのような意識で投げるのか。身体での実践を通して、体感をことばで表現し、自己の問題意識を紡いでは、また身体で実践する。その繰り返しの末に、興味深い研究結果が得られた。

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峰尾 健一 [HONZ]

1993年、横浜生まれ。横浜市立大学卒業。5歳から高校卒業までを秋田県で過ごし、大学入学と同時に横浜へカムバック。基本的に乱読派のため、好きなジャンルを絞りきれず困っている。

 


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