仕事上のちょっとした工夫が、成果や評価に大きな差をうむものではないでしょうか。世界一のコンサルティングファームで世界7ヵ国のビジネスに携わった著者が、社内外の“できる人”たちの仕事の鉄則をまとめた翻訳書『47原則 世界で一番仕事ができる人たちはどこで差をつけているのか?』(原著タイトル“THE McKINSEY EDGE”)より、今日からでも役立つ成功原則の一部を紹介していきます。
今日のお題は「すべての問いに30秒以内で答える」。忙しい幹部に対して、過不足ない内容で短く回答することが大事だとしても、具体的に話すべくトピックをどのように選べばいいのか、そのコツを伝授します!

 経営幹部クラスの人たちに一瞬で好印象を与える方法があります。

 それは、過不足ない内容で短く回答すること。私自身は「すべての問いに30秒で答える」ことを、自分に課しています。

簡潔に答えて好印象を残す一番のコツは<br />「再クリック理論」に集中すること簡潔かつ手短に答えるコツとは?

 例えば、複数のインタビューで得られた大量の情報を素早く理路整然とまとめて話すのは、非常に難しいことです。まとめは詳しすぎてもいけないし、大まかすぎたり難解すぎても不十分です。また、聞き手が理解できるように、専門用語に解説を加えるなどして答えを調整する必要があります。マッキンゼーのシニア・ディレクタークラスになると、即座に聞き手の波長に合わせて話せる、まれな能力を持っていました。

 特別な能力を持ち合わせていなくても、意識して話すことで随分改善できます。まずは、内容の濃い多くの情報を、ごく短時間で伝えようとするのは非現実的だ、と肝に銘じて、いくつかのルールを学ぶことが大切です。

多くの情報を手短に伝える3つのルール

第1のルールは、「再クリック」理論を理解すること。

 電子商取引サイトで製品に関するコメントや推薦文を読んだり、ベストセラー本のごく短い要約を読んだりする場合を想像してください。この手の文章は、興味を引かれるきっかけにはなっても、全容を知るにはまったく不十分です。だからこそ、さらなる情報を求めてリンクを再びクリックすることになります。この心理を利用してください。あくまで30秒の回答ですべてを伝えようとしてはいけません。相手が興味を持つトピックに、注意を呼び起こすきっかけを与えることに集中しましょう。

第2のルールは、主たる質問を分解する習慣を身につけること。

 経営幹部から「プロジェクトはどんなふうに進んでいますか?」と聞かれたとします。あなたは、進捗について漫然と答えるのではなく、すぐに相手の立場に立って相手が知りたいことは何かを考えてください。この場合、おそらく次に挙げる4つの具体的な質問に沿った内容になるでしょう。

1 プロジェクトは全体的にどんな状況か、良いか悪いか?
2 1で回答した状況を示す2〜3の事例は何か?
3 問題について自分はどう対処するつもりか?
4 相手の重役はどんな点で力になれるか?

 具体的な質問を考えるために一番良い方法は、代数の等式に当てはめてみることです。主たる質問(A)に対して意味のある回答をするためには、A=x+y+zのような等式で「基本変数(x、y、z)に何を用いればよいか?」というふうに考えるのです。一般的な指針として、「利害関係者、プロセス、スケジュール」を何らかの形で用いると、相手の質問を分解して具体的に回答するのに役立ちます。

第3のルールは、自分の回答について常にダーツのように考えること。

 ダーツボードの一番内側の円“ブルズアイ”を狙うのではなく、一番外側のリングから狙います。というのも、最初から的外れな質問をして相手を失望させる危険を避けるためです。といっても、相手がまるで関心のない話から始めてもいけません。「御社の属する○○業界でいえば……」など、相手の興味を惹くヒントを話に盛り込みながら、一番外側のリングから素早くブルズアイに焦点を移すことを意識してみてください。

 これらのスキルを身につけるには訓練が必要ですが、あなたが今日から始められる具体的な練習方法があります。

まず、答えを前もって用意しておくことから始まります。

 例えば、スポーツ用品メーカーのCEOと一緒にランチをとった時のことです。話題は主にリーダーシップの育成でした。CEOに「他にどんな仕事をしているか」と尋ねられたので、最近講演をしたことを話すと「トピックは何か」と聞かれました。「中国で組織が直面している課題に関することだ」と答えると、CEOは「その組織の課題とは一体何だ?」と質問してきました。

これに対する回答は長くなるので、私は選択肢を提示しました。手短に骨子を添えながら、4つの課題を挙げたのです。すると彼は「従業員が定着しない問題は、金銭的な報酬が最大の要因ではない」というトピックに注目しました。実は、従業員の定着や研修・育成に相手が興味をもつだろうと予想していたので、私はこのトピックを最後に挙げたのでした。

 このように「質問を数段先まで先回りする」練習は、将棋を指していて相手の動きを数手先まで読むのと似ています。