「日本企業はすでにグローバルなウォー・フォー・タレント(人材をめぐる採用・育成競争)に巻き込まれ、負けている。まず、この現実を認識するところからスタートしなければならない」と、前回書かせていただいた。こうした反省に立って、この連載では、世界の企業の採用に目を向けることで、日本企業にとって学ぶべき点があるとすればそれは何かということを考えてみたい。世界の企業との差異ではなく共通点に注目することで、日本企業の採用の突破口を見出すのだ。

 第2回目の今回は、米国企業の採用のトレンドについて概観したい。

米国企業の採用は自社のウェブサイトにお金をかける

 米国の採用においてまず特徴的なのは、「企業のウェブサイトの募集ページ」を極めて重視する点にある。

 人材サービス企業CareerXroads社の調査によれば、自社のウェブサイトから直接採用される人材は、全体の 19.1%にものぼり、求人サイト(15.4%)や紙媒体の広告からの採用(0.5%)を大きく上回っている。特に2000 年代後半以降、企業のウェブサイトの募集ページや求人情報サイトなどインターネットを介した採用の割合が増えており、私の知人の研究者によれば、過去10年の間に90%のアメリカ企業が自社のサイトを求職者とのコミュニケーションに使っており、これはあきらかにアメリカ企業の採用上の主要媒体の1つだという。

 研究者の世界でも、「求職者にとって企業が魅力的に見えるようなウェブサイトデザインとはどのようなものか」といった研究がフロンティアトピックとなっており、そうした成果を踏まえて、魅力的なサイト作りへと積極的に投資する企業が増えている。

 魅力的なサイト作りに投資しすぎた結果、あまりにも魅力的なサイトが出来上がってしまい、自社が必要としないような求職者までもが大量にエントリーをしてくるようなってしまった……、などという、笑えるような笑えないようなエピソードもある。

 とにかく、米国企業にとって自社のウェブサイトは、採用活動において極めて重要な手段なのであり、この点において、多くの企業が自社のウェブサイトよりも大手就職情報サイトの方を重視している日本企業と、極めて対照的である。