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今週のキーワード 真壁昭夫

本当は中国自身が損をするレアアースの禁輸圧力に、
日本はなぜ翻弄されてしまったか?

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第145回】 2010年10月5日
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 尖閣諸島沖の中国漁船と日本の巡視艇の衝突に端を発した日中間の亀裂は、以前から懸念されていた“中国リスク”を顕在化させる結果となった。そのリスクの具体例がレアアース(IT関連商品に使う希土類)を巡る禁輸騒動だ。

 希土類は、「工業製品のビタミンのようなもの」と表現するとわかりやすいかもしれない。主にIT関連製品の多くに少量ずつ使われており、当該製品の機能を高めたり、円滑な動きを補助する役割を果たしていることが多い。

 その用途は、工業用磁石やハイブリッド車に使うニッケル水素電池、液晶ガラスの研磨剤や光学レンズの添加剤など、多岐にわたっている。

尖閣問題で突如浮上した「外交カード」
中国には国際社会の常識が通用しない?

 実は、もともとわが国企業が開発援助や技術力を供与して、中国の希土類の産出量を増やした経緯がある。ところが、中国自身の工業化の進展に伴い、国内での利用を優先するため、中国政府は毎年10%輸出枠の削減を行なってきた。

 2010年に限っては、40%もの削減方針を打ち出していた。そんなタイミングで尖閣諸島問題が発生し、中国政府は一時、輸出を事実上停止する措置を取ったのである。

 世界最大の希土類消費国であるわが国としては、短期的にはかなり困難な状況に追い込まれることになる。それを危惧したわが国は、拘束期間の延長を決めていた船長を慌てて釈放することを決めた。

 いかにも無為、無策なスタンスを取ったことによって、わが国政府には、国内外から厳しい批判が寄せられることになった。

 船長の釈放によってレアアースの禁輸は解かれたものの、今回改めて明確になったことは、中国政府に国際社会の常識が通用しない“中国リスク”があることと、わが国政府は稚拙な外交能力しか持っていないことだ。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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