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上久保誠人のクリティカル・アナリティクス

小池百合子氏を当選させた「修羅場」の経験値

上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]
【第137回】 2016年8月2日
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 政治資金問題をきっかけとした舛添要一前東京都知事の辞職に伴う東京都知事選は、7月31日に投開票が行われ、小池百合子元防衛相が当選し、初の女性都知事が誕生した。小池氏は所属する自民党の支持を得られないまま出馬し、自民党推薦の増田寛也元総務相との「分裂選挙」となった。その上、知名度が高いジャーナリストの鳥越俊太郎氏が、民進党、共産党、社民党、生活の党などが推す「野党統一候補」として出馬したことで、当初は苦戦が予想されていた。しかし、いざ選挙戦が始まると、小池氏は順調に支持を拡大して勝利した。

 小池氏は選挙戦で一貫して「しがらみのない」「たった1人の戦い」を強調していた。だが、実際の彼女の戦いは、そんな青臭い、甘いものではない、したたかなものだった。すべては、小池氏の思惑通りに進んでいた。一言でいえば、「究極の先出しジャンケン」を仕掛けた小池氏に、ライバルは翻弄されてしまったのだ。

増田氏は組織選挙を世論に批判され
身動きができなくなった

 東京都知事選の候補者擁立に関して、自民党内でアイドルグループ『嵐』の櫻井翔の父親である桜井俊前総務省事務次官の擁立を軸に調整が行われていた時、小池氏は党に何も相談せずに、突如都知事選への出馬の意思を表明した。石原伸晃自民党東京都連会長は、小池氏に不快感をあらわにした。だが、小池氏は意に介さず自民党都連に推薦を依頼し、推薦を得られないとみるや、即座に依頼を撤回した。

 しかし、小池氏は「むしろしがらみなく戦える」として、推薦なしで出馬に踏み切ることを改めて表明した。また、党本部へ出向き、谷垣禎一幹事長に対して「除名でも、どんな処分でも受ける」と言い放ったのだ。自民党は、最終的に増田氏を担ぐことを決めた。

 選挙戦は当初、巨大政党をバックにした増田氏が小池氏よりも有利と思われた。実際、選挙戦スタート直後の世論調査では、鳥越氏、増田氏に次いで、小池氏は3番手に甘んじた。しかし、選挙戦が進むにつれて、次第に小池氏が支持を伸ばしていくことになった。

 小池氏に自民党都連は怒り心頭であり、党員に対して、増田氏以外の候補を応援した場合、本人のみならず、その家族は親類も除名するという厳しい姿勢を示した。だが、これに対して、党員の間に反発が広がった。都議の中に、公然と反旗を翻して小池氏を応援する者が続出したのだ。また、反発は連立パートナーの公明党にも広がっていった。都民の間にも、小池氏への同情が集まり、都連のやり方は旧態依然たる政治だと批判された。情勢調査では、一挙に小池氏が首位に立った。

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上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]

1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。博士論文タイトルはBureaucratic Behaviour and Policy Change: Reforming the Role of Japan’s Ministry of Finance。

 


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国際関係、国内政治で起きているさまざまな出来事を、通説に捉われず批判的思考を持ち、人間の合理的行動や、その背景の歴史、文化、構造、慣習などさまざまな枠組を使い分析する。

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