今、日本経済が景気後退に陥るリスクが高まっている。多くのエコノミストが、日本の生産動向が急角度で落ちていきそうな様子を見て、その蓋然性が決して小さくないと考えている。
景気シナリオを考えるときの焦点は、何といっても米国経済である。目先、米国経済は、年末にかけてクリスマス商戦、年始からの「財政の崖」をうまく乗り切れるかどうかにかかっている。
それに対してFRBは、9月13日にQE3を決定して、株式市場を刺激する構えを採った。株価が上昇すれば、クリスマス商戦を盛り上げることができる。また、その余勢を駆って「財政の崖」を乗り越えることも期待される。
しかし、財政の崖は、一足飛びに越えるには大きすぎる段差である。議会予算局(CBO)によれば、各種減税停止、歳出削減がそのまま行なわれば▲5,600億ドル(▲44兆円)の押し下げになる。名目GDP対比で▲3.6%に相当する。減税延長や歳出削減の延期が期待されるが、それでも全ての段差をなくすことはできないと考えられる。
日本経済にとって今後の景気情勢は、欧州・中国の要因に加えて、頼みの綱の米国経済が牽引力を失わずにいられるかどうかにかかっている。
財政政策を巡る「日本化」
次に、米国経済の陥っている状況を、財政政策との関係で鳥瞰してみたい。
「財政の崖」の議論を聞いた人の中には、「景気対策を打ち、潤沢に歳出・減税を増やせば、景気への脅威などは問題ないではないか」と考える人も多い。
この素朴な疑問が実行できない理由については、議論の経緯を振り返って説明せねばならない。現職のオバマ大統領は、大型の財政刺激を中心に据えたケインズ政策を引っ下げて2009年1月に就任した。