テスラの対象市場は、高級車や電気自動車(EV)だけではない。視点を変えれば、キャンプ愛好家やホテル利用者も含まれる。そのため、「市場シェア」や「市場浸透率」という従来指標を用いたところで、彼らの成長可能性を正確に計測することはできない。では、テスラのような「カテゴリー創造者」は、どんな指標で評価すべきなのか。


 イーロン・マスクは先頃、テスラの「モデル3」を新発売して脚光を浴びた。

 この手頃な価格の電気自動車(EV)は、マスクが11年前の2006年に「秘密のマスタープラン」として掲げたものである。最初にスポーツカーを開発し、その後(その売上げで)より手頃な価格のゼロ・エミッション車をつくりたい、と彼は考えていた。基本的には、それが成し遂げられたわけだ。

 モデル3は総じて大好評を得て、数年の納車待ちとなっている。マスクは業界の先駆者であるとはいえ、これは大きな成功であろう。

 しかしながら、テスラについてはいまだに、よく理解されていない部分も多い。同社の株式レーティングは、買い奨励、中立、売り奨励がほぼ拮抗している。これは、ウォール街が状況をまったく理解できていないことを意味する。

 最近、同社が15億ドルの社債発行を発表したときも、株主の反応は鈍く、株価は0.5%とやや下落した。サプライズの提供に長けたテスラについて、アナリストは「イーロン・マスクの成功に賭けないのは愚かなのかもしれない」と思い始めているようだ。

 テスラのような会社をめぐる困惑の主な原因は、従来のビジネス指標が時代遅れで、過大評価や過小評価を生みがちな点にある。市場浸透率や市場シェアといった昔ながらの指標は(多くのリーダーはこれらによって評価される)、市場での機会と脅威を見失わせる元凶となっているのだ。

 私は、マスクのような人物をカテゴリーの創造者だと見なしている。漸進的イノベーションに頼らず、新たなカテゴリーを生み出し、競争のルールを一変させてしまう人物だ。こうした状況下では、既存の測定方法は通用しない。

 従来のあらゆるビジネス指標を捨て去れ、というわけではない。しかし、それらに内在する根本的な欠陥を認識し、新しい指標で補完すべきである。要は、指標を複眼的に扱う必要があるのだ。

 最も変えるべきと思われる指標は、次のとおりである。