従業員の燃え尽き(バーンアウト)を防いで幸福度を高めるために、週休3日制の導入が真剣に議論され始めている。欧州の企業や組織を中心に試験的導入が始まっており、フランス、オランダ、英国などが先行している。ただ、週休3日制は企業にも労働者にも多くのメリットをもたらすことが明らかになっている一方、本格的に定着させるには乗り越えるべき大きな課題もある。


 週4日だけ働いて5日分の給与を受け取る?できすぎた話に思えるが、いま、欧州の多くの国では真剣に議論されているテーマだ。その理由は、柔軟な働き方を認めようという文化的な変化に加えて、企業にとっても有益であることを示す証拠が出てきたからである。

 欧州の組織の多くは、賃金はそのままで、労働時間を週36時間(5日)から28時間(4日)へと減らしている。燃え尽き(バーンアウト)を減らし、労働者の幸福度と生産性、および雇用主へのコミットメントを高めるためである。

 週4日労働という発想自体は、けっして新しいものではない。

 フランスでは約20年前に、国全体のワーク・ライフ・バランスを向上させる目的で労働時間の短縮(週35時間制)を実施した。この策についてはいまだ多くの議論がある。賛成派はこれが雇用を創出し、ワーク・ライフ・バランスを保っていると主張し、反対派はフランス企業の国際競争力が落ちている要因だと主張している。

 現在、週4日労働の流れを牽引しているのはオランダである。週平均労働時間は(フルタイム労働者とパートタイム労働者の両方を含めて)約29時間であり、OECD(経済協力開発機構)によると全主要先進国中で最も短い。オランダでは2000年、ワーク・ライフ・バランスを守り推進するための法律によって、すべての労働者に完全有給休暇と出産育児休暇が認められた。

 英国でも、多くの組織がこのアイデアを試している。2019年7月、本稿執筆陣の一人(ベン・レイカー)はヘンリー・ビジネススクールの同僚たちとともに、英国の労働者に対する週4日労働の影響をより深く理解するため、505人のビジネスリーダーと2000人以上の労働者を対象にアンケート調査を行なった。その結果には、プラス面とマイナス面が入り混じっていた。

 アンケート調査の対象となった英国のビジネスリーダーの半数は、フルタイム従業員の一部あるいは全員に対して週4日労働を実施していると答え、その結果、従業員の満足度が上がり、病欠が減り、年間約920億ポンド(総売り上げの約2%相当)のコスト削減が実現したと述べている。

 労働者の側では77%が、週4日労働と生活の質の向上とのあいだに明確な関連があると答えている。アンケート対象となった20代を中心とするZ世代と40代中心のX世代の75%が、週4日労働は特に魅力的だと考えている。そして浮いた時間をリラックスのためではなく、スキル向上、ボランティア活動、趣味を活かした副業に投じている。またZ世代の回答者の3分の2(67%)は、週4日労働が就職先を選択する際に影響を与えると答えた。

 週4日労働を導入した組織では、リーダーの約3分の2(64%)が、病欠日数の減少と全体的な幸福度のアップによって、スタッフの生産性と仕事の質が向上したと答えている。回答者たちが挙げた幸福度へのもう一つのプラス面は、通勤回数の減少である。休みが1日増えると、その分通勤の苦痛が減るわけだ。

 大半の企業では週4日労働をどのように実施しているのだろうか。多かった回答は、従業員を2つのグループに分けてローテーションさせ、半数が月曜に休み、残り半数が金曜に休むという方式である。これによって企業は、平日ずっと営業を続け、顧客の要求に応えることができる。