女性が活躍できる環境を整えることは、企業にさまざまなメリットをもたらす。男性上司が多数派の中でそれを実現するのは容易ではないが、女性という理由だけで優秀な人材が埋れてしまうのを防ごうとする男性も多い。彼らが女性部下の優れた「スポンサー」や「メンター」となることで、ダイバーシティが進み、組織の業績向上につながるだろう。


 女性の活躍を後押しすることは、業績を上げ、ジェンダーのバランスを改善し、職場とリーダーシップチームのダイバーシティを推進するために不可欠だ。しかし、ワーキングマザー・リサーチ・インスティテュートのデータによると、財務権限を伴う仕事のキャリアパスについて、男性の48%が過去2年間に詳細な情報を得ていたのに対し、女性はわずか15%だった。さらに、男性の54%が過去2年間にメンターやスポンサー(支援者)とキャリアについて話し合っていたが、女性は39%だった。

 このような違いが生まれる理由は、白人男性が大多数を占めるリーダーが、自分と似ていない人に十分な支援や指導をしないからだ。

 タレント・イノベーション・センターの最近の調査によると、エグゼクティブの71%は自分と同じ性別と人種の人を庇護している。つまり、女性とマイノリティは、男性の同僚と同じような支援の恩恵を受けていない。そして会社や組織は、多様な人材の可能性を十分に活用できずにいる。

 #MeToo運動をめぐる混乱は、この状況を図らずも助長しているかもしれない。リーン・イン財団ブルームバーグ・メディアが2018年に行った2つの調査によると、職場のセクシャルハラスメントや性的暴行の疑惑が次々に注目を浴びた後、一部の男性は女性との仕事上の関係を敬遠するようになった。今年1月に開催された世界経済フォーラムでも、男性の上級エグゼクティブたちが、女性と一対一でメンタリングをしないことをリスクマネジメントの戦略として語っていた。

 こうした反応は生産的ではない。会社や従業員にとって最善のことをやりたいと思っている男性はたくさんいる。そのような支援や擁護が、最大の変化をもたらすのだ。

 スポンサーはビジネス上の目的を達成するために、自分の地位や力を使って庇護の対象者のキャリアを支援する。慈善活動ではない。スポンサーは影響力のあるリーダーであり、部下のスキルと貢献に対し、意図を持って投資して利用する。それによって自分の目標を達成し、対象者の潜在能力を最大限に伸ばすのだ。

 そのためには対象者のスキルや能力を把握して、彼らの潜在能力を見極め、その進歩を演出しなければならない。ただし、手取り足取り教えたり、訓練するよう励ましたりする必要はない。

 一方で、メンターはスポンサーと同じような権力はないかもしれないが、かなり大きな影響力を持ちながら、そのすべてを庇護に使うわけではない。プライベートにも助言するメンターは少なくないが、積極的に擁護することはあまりない。

 業績を上げてダイバーシティを推進したいと真剣に考える企業は、社内のあらゆるレベルで、多様な才能を後押しするスポンサーを活用すべきだ。

 リーダーは折に触れて、戦略的思考や変化を支持すること、財務上の意思決定、部下の管理について学ぶが、スポンサーのやり方や、その影響力を最大限に活用する方法を教わることはない。その結果、白人男性は、白人男性のことは無意識に後押しするのだが、女性や有色人種を後押しするスキルがない。

 だからと言って、男性のリーダーに腹を立てたり、彼らを責めたりするのではなく、組織が彼らに協力を促し、スポンサーとして優れた力を発揮できる環境を整える必要がある。そして、男性は学んだことを常に実行しなければならない。

 その出発点は、優れたスポンサーの条件を理解することだ。そこで、私たちが世界のリーダーや企業に助言する中で見出した、8つの重要なステップを紹介しよう。