顧客至上主義を掲げる企業は多いが、どうすればそれを実現できるのか。グラスドアでチーフエコノミストを務める筆者らの調査により、顧客満足を高めるためには、従業員満足を高めることが有効であることが示された。顧客ファーストを推し進めるために従業員を疲弊させてはならない。むしろ、従業員の幸せを追求することが顧客の幸せに直結する。


 誰もが知っている通り、顧客はビジネスの命運を握る。20世紀前半にデパート業界の重鎮たちは、「お客さまは常に正しい」という格言を生んだ。現代を象徴する経営者ジェフ・ベゾスはアマゾンの驚異的な成功について、顧客第一を貫いていることを強調している

「競争相手を重視する、製品を重視する、テクノロジーを重視する、ビジネスモデルを重視する……顧客至上主義(カスタマー・フォーカス)こそ、Day1(訳注:創業1日目)の活力を維持するために最も重要なことだ」

 顧客至上主義を目指す企業のために、私たちの最新の研究から新しい洞察を提言したい。顧客至上主義を実現するカギの一つは、従業員のエンゲージメントと満足度である。

 私たちのサイト「グラスドア」は、従業員の経験について多くのことを知っている。そこで仕事や給料、企業評価、口コミに関する数百万件のデータベースをもとに、リテンション人材獲得株価などに従業員の満足度がおよぼす影響を数値化した。

 企業は従業員に投資し、商品やサービスを提供する側が自分たちの仕事に満足できるようにすることによって、高い顧客満足度を実現できるのだろうか?

 この問いについて、私たちは明確な答えにたどり着いた。

 グラスドアで報告される従業員の幸せと顧客満足度のあいだには、今日の代表的な大企業の大規模なサンプルによると、統計的に強い関連性があるのだ。すなわち、従業員の満足度が高いほど、明らかに、より高い顧客満足度を提供できる。小売や観光、飲食、ヘルスケア、金融サービスなど従業員と顧客が密に接する業界は特に、その傾向が見られる。