『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』では毎月、さまざまな特集を実施しています。ここでは、最新号への理解をさらに深めていただけるよう、特集テーマに関連する過去の論文をご紹介します。

 DHBR2020年4月号の特集タイトルは「女性の力」である。

 男女不平等の解消に向けた長年にわたる試行錯誤の歴史にあって、ようやく世界で大きな変化が芽生え始めている。とはいえ、賃金・昇進格差からハラスメントまで、まだまだ課題が山積みだ。制度改正や人事施策のみならず、個人、組織、そして社会に染み込んでいる無意識のバイアスをどう打ち破っていけばよいのか。

 ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団のメリンダ・ゲイツ共同会長は「いまこそ、女性の力を解き放つ」の中で、「社会における女性の権限と影響力の拡大」を目標に掲げた。そのために最も重要なことは戦略的資本および利害関係者との協働であるとして、3つの効果的な戦略を提言する。

『ハーバード・ビジネス・レビュー』シニアアソシエートエディターのグレッチェン・ガベット氏らによる「世界の男女格差を表す6つのグラフ」では、世界経済フォーラムが2006年以降毎年発表している「世界ジェンダーギャップ報告書」に基づき、経済参加と機会、教育水準、健康と生存、政治的エンパワーメントの4つの視点から、地域別の男女間格差の現状を分析した。

「全社員が有給育児休暇を取れる社会を」では、レディット共同創業者であり、現在は投資会社であるイニシャライズド・キャピタルの共同創業者兼マネージングパートナーとして同社を率い、セリーナ・ウィリアムズの夫で2歳の娘の父親でもあるアレクシス・オハニアン氏へのインタビューをまとめた。オハニアン氏は、みずから育児休暇を取り、「働く父親」としての処し方を学んだ後、米国で有給家族休暇を義務付けようと提唱するようになった。その動機が語られる。 

 ユニオンスクエア・ベンチャーズのマネージングパートナーを務めるレベッカ・カデンによる「ベンチャーキャピタルが女性の進出に果たす役割」で同氏は、非線形の成長を目標とするベンチャーキャピタルならば、平等の歩みを加速できると主張する。そのためには現状のデータの公開、女性の成功モデルの宣伝、コミュニティづくり、さらには業界の改革という4点に投資を振り向けるべきだと論じる。

 タイムズ・アップ最高戦略・政策責任者のジェニファー・クライン氏による「ハラスメントの悪循環をいかに断ち切るか」では、#MeToo運動に呼応する形で始まったセクハラ被害の撲滅運動TIME’S UPの団体で要職にある筆者が、ハラスメントが企業にも害があることを論じ、セクハラ被害によって女性の力が削がれるために、そこでまたハラスメントが起こりやすくなるという悪循環を指摘する。この悪循環を断ち切るには、法律改正、ビジネス慣行の変革、文化規範の変革が必要と説く。

 チェース・コンシューマー・バンキングのサスンダ・ブラウン・ダケットCEOへのインタビュー「すべての女性に自己実現のための資産を持ってほしい」では、金融業界で上級職に就いている黒人女性の一人としての使命が語られる。

 米国で通年雇用の男女の資産額を比べると、100対32という大きな差がある。マイノリティの女性ともなれば、さらにこの差は拡大する。この状況の改善のために筆者は、恵まれない地域社会を中心に数百万人の金融リテラシーと経済状態を改善することに取り組んでいる。

 米国下院議員エリス・ステファニク氏による「議会により多くの女性を送り込む方法」では、女性の政治参加が進まない状況に警鐘を鳴らす。ステファニク氏は、共和党の女性議員を増やすためのプロジェクトを立ち上げた。共和党の女性を巻き込み、エンパワーし、知名度を高め、当選させるための努力を重ねている。

 エール取締役の篠田真貴子氏による「『無意識バイアス』が日本の女性活躍を妨げている」では、メリンダ・ゲイツの論文「いまこそ、女性の力を解き放つ」の意義や背景、示唆を明らかにし、その視点から日本の現状を分析し、日本の社会、企業、個人がどう行動すべきかについて考察していく。男女平等の実現には、制度改正や人事施策など外からのアプローチと同時に、格差を固定化する「無意識バイアス」を変える内からのアプローチが不可欠であると篠田氏は指摘する。

 厚生労働省局長や資生堂代表取締役副社長を務めた岩田喜美枝氏へのインタビュー「女性自身も変わらなければ真の男女平等は実現しない」では、日本社会がいかに男女平等への歩みを進めてきたのか、これから真の平等を実現するうえで何をすべきかについて語ってもらった。

 民間企業も官公庁も4年制大学卒の女性をほとんど採用せず、職場でワーキングマザーに対する支援制度など存在しなかった時代、岩田氏は労働省(現厚生労働省)に入省し、2人の子を持つ母親として仕事と家庭の両立に奔走した。その中で、日本の男女平等を大きく前進させた、男女雇用機会均等法の作成にも携わっている。その後、資生堂初の女性副社長として数々の改革を実行するなど、行政と民間の最前線で女性の活躍を推進してきた。