小規模自治体ほど厳しい現実

日本の上水道普及率は、2022年3月末時点で98.2%と世界的にも高い。しかし一方で、設備の老朽化が進んでいる。水道管の法定耐用年数は40年だが、1950年代後半から70年代前半の高度経済成長期に整備された施設が多いのが理由だ。

耐用年数を超えた水道管路の割合は年々増えており、20年度には20.6%となった。10年度には7.8%だったことからも、直近で著しく老朽化が進んでいることが分かる(図1参照)。当然、水道管路の更新が必要だが、更新率は年々低下。20年度は0.65%だった(図2参照)。

【図1】上水道の管路経年変化率の推移

【図2】上水道の管路更新率の推移

日本の上下水道を取り巻く課題が深刻化している理由出典:「水道統計」/令和4年度全国水道関係担当者会議 会議資料
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耐震化も遅れており、水道管路の耐震適合率は約4割にすぎない。厚生労働省は23年3月に開催した全国水道関係担当者会議で「大規模災害時には断水が長期化するリスクがある」とした。実際、東日本大震災では断水から復旧まで半年以上を要した地域もあり、24年1月の能登半島地震でも断水や下水道の損傷が多数の自治体で起きている。

なぜ、老朽化や耐震化への対応が遅れているのだろうか。

厚労省は前出の会議で「水道事業者が小規模で経営基盤が脆弱」「計画的な更新のための備えが不足」を理由に挙げた。水道事業は主に市町村単位で経営されており、多くが小規模だ。職員数が少なく、水道事業を担う人材の高齢化も進んでいるため、適切な資産管理や危機管理対応ができない。人口減少が加速度的に進む今後、水道事業を継続できない恐れすらある。しかも、厚労省によれば、約2分の1の水道事業者は給水原価が供給単価を上回っており、水道管路更新のための資金を十分に確保できていない事業者も多いという。

水道行政の大改革と官民連携の強化

下水道も、同様に老朽化や耐震化の課題を抱えている。加えて、普及率も22年3月末時点で80.6%と、上水道に比べて低い。留意しなくてはならないのが、自治体の人口規模によって普及率に差があることだ。国土交通省は「人口5万人未満の市町村等では、未だ汚水処理人口普及率が低い」としている。人口5万人未満の市町村が全自治体の7割を占めていることを考えると、下水道の整備も非常に重要だ。

しかし前述のように、小規模自治体が単体で上下水道インフラの整備および維持・管理に取り組むのは現実的に難しい。そこで国が進めているのが、市町村の区域を越えた広域連携や官民連携だ。とりわけ官民連携は、専門人材を確保し水道サービスの質や技術水準を向上させる上で有効なため、積極的に推進されている。

国が上下水道インフラの持続可能性の確保に危機感を募らせているのは、水道行政の機構改革を断行したことにも見て取れる。これまで上水道は厚労省、下水道は国交省の所管だったが、24年4月からは国交省で一元化することになったのだ。23年6月には、従来の官民連携よりも契約期間が長くなる新たな官民連携方式「ウォーターPPP」も打ち出された。安心・安全な生活を支える上下水道インフラを守るために、民間事業者が果たす役割はますます高まるだろう。