高い専門性が求められる「水コンサルタント」

日本の上下水道の多くは、1950年代後半から70年代前半の高度成長とともに着実に整備が進められてきた。それから半世紀以上が経過した今、直面しているのが老朽化の問題だ。今後の維持管理を考慮した改築・更新・修繕を行わなくてはならないが、一筋縄ではいかないとオリジナル設計の菅伸彦代表取締役社長は話す。

「管路施設(下水道を構成する施設全般)のパイプ一つを取っても、単純に設置年だけで更新の優先順位を付けることはできません。例えば、民間の住宅やビルから下水道本管へのジョイント部分は腐食しやすいために道路陥没の要因になりやすく、定期的な検査をした上で修繕計画を立てる必要があります」

地形や地質、地下埋設物の精査だけでも高度な専門性を要するが、そうしたミクロの視点だけでは足りない。近年、北海道、東北地方といった統計的には降雨量が少なかった地域でも浸水被害が多発していることを踏まえた雨水ポンプ施設等による対策や、カーボンニュートラルを目指した下水道事業における脱炭素化といった、将来にわたるマクロの視点を併せ持つことが求められる。加えて、老朽化施設の更新と耐震改修工事を同一時期に行う工事発注を検討して全体工事費の低減を検討するなど、限られた財源の中でベストエフォートも期待されている。本来、それは事業主体である自治体の役割だが、担うことのできる人材は著しく不足しているのが現実だ。

次ページからは、自治体の人手不足が水インフラにもたらす問題と、それを解決する「水コンサルタント」を社内で育成するための、オリジナル設計のユニークな取り組みについて紹介していく。