豊永 私たち自身のことをいえば、ハードルしかありませんでした。農業はやはり経験産業だと思います。
おいしいトマトを作れるようになるのに10年かかるといわれてきました。まさにでっち奉公の世界です。特に日本では四季があり、北海道から沖縄までさまざまな環境がある中で、1000人の農家がいれば1000人のやり方があるといわれるほど各地に根付いたノウハウがあります。
一方で、農業大国のオランダなどではこれらの暗黙知を形式知化し、さらにシステム化が進んでいます。日本においても、テクノロジーの力でこれまで10年かかっていたものを2年に短縮するといった取り組みがこれから必要だと思います。
三村 そのためには、土壌や気候などに関するデータをきちんと蓄積し、多くの人がそのデータをよりどころとした再現性のある農法ができるようになることが必要です。そうなると、農業の世界がさらに活性化していくと思います。
ですので、この4月に開講する「AFJ日本農業経営大学校 イノベーター養成アカデミー」では、仮説検証を重視しています。「リーンスタートアッププロセス」という手法を取り入れ、仮説検証から事業計画の策定までを行うことで、アグリビジネスイノベーターとなるための必要なスキルを身に付けてもらいたいと考えています。
株式会社ポモナファーム 代表取締役 CEO
豊永 翔平 氏
1989年生まれ。環境保全と両立する農産業の可能性を探り、2016年にCultiveraを設立。独自特許技術Moiscultureを基盤にさまざまな農業技術の研究開発を行う。2017年に三重県多気町にて農業生産法人ポモナファームを設立し、トマトやマイクロリーフ、とうがらしなどを栽培。2023年より矢崎エナジーシステム株式会社と環境保全型農業システムの実証実験を行っている。
多様な業種の企業や人材が集まる場にしたい
——「イノベーター養成アカデミー」を開講する狙いや特色についてご紹介ください。
三村 アグリビジネスにおいて、10倍思考でのイノベーションを実現するためには、AIやデータ分析の活用など、IT業界などの異業種から見ても参入余地があり大変魅力的な市場領域だと思います。
一方で、そのチャンスがなかなか知られていない。あるいはそこに気付いたとしても、自ら行動を起こして、どうやって起業したらいいのか悩まれている方も一定数いると考えています。そこで本アカデミーにおいて、仮説検証を素早く回しながら、自分のビジネスプランを磨いていくようなカリキュラムを導入しました。
豊永 農業は仮説検証を行おうとしても成果が出るまでに時間がかかります。トマトの場合、年に数回しか検証ができません。このようなアカデミーがあれば、1人で悩むのではなく、仲間やそのネットワークでいろいろな人たちと壁打ちしながら検討ができそうです。さらに、AFJのネットワークもあるので、現地実証なども踏まえて、スピード感を高めることもできそうですね。
三村 まさにそこを手厚くサポートするところに主眼を置いています。例えばPoC(概念実証)を行うために、実証フィールドを貸してくださるような農家を探すのは大変だと思うのですが、そこはまさにAFJのネットワークを通じて、それを実現できるようなマッチングも支援していきます。
また、AFJには食や農業関連だけでなく、小売り、物流、機械、IT関連などさまざまな企業が会員として参加しています。大手企業とスタートアップがコラボレーションする場にもしたいと考えています。
豊永 私たちも多くの大企業の皆さまと一緒に共同開発を行わせていただいています。イノベーションを起こそうとしても、ゼロから考えるのはなかなか大変です。さらに、世界の食料危機や気候変動といった大きな課題に取り組むためには、一つのイノベーションだけでは不可能です。本アカデミーが、高い志を持つ人や企業が交流する起点の場になるといいですね。
三村 カリキュラムは平日の夜間と土日で行うので、今の仕事や事業を続けながらでも学ぶことができます。またメンター制度を採用し、伴走型のバックアップを受けながらビジネスの起案からプラン作成までを最短1年で修了できる点も本プログラムの魅力といえます。
世の中が予測不可能であるということを受動的に捉えるのではなく、未来は自分たちで変えられる、自分たちが望むアグリビジネスの未来をつくっていきたいと能動的に向き合う志のある方に、ぜひ参加してほしいと願っています。
AFJ日本農業経営大学校
TEL:03-5781-3751
URL:https://www.afj.or.jp/jaiam/innovator/
株式会社ポモナファーム
URL:https://lit.link/pomonafarm