「2024年問題」によって“運べない危機”への懸念が高まる中、新たな物流の担い手として貨物鉄道への期待がにわかに高まっている。その期待を一身に背負っているのが、日本貨物鉄道(以下、JR貨物)だ。JR旅客6社とは異なり、日本全国を事業エリアに貨物鉄道事業を展開する唯一の貨物鉄道会社となる。

過去最大の「追い風」。貨物鉄道にかつてないほどの期待が集まる理由日本貨物鉄道
高橋秀仁執行役員 
鉄道ロジスティクス本部 営業統括部長

なぜ今、貨物鉄道なのか――。その理由として特筆されるのが、鉄道という輸送モードが持つ労働生産性の高さと環境優位性だ。同社の高橋秀仁執行役員は「1列車で最大10トントラック65台分を運ぶことができるため、『2024年問題』で懸念される長距離トラックドライバーの不足を補うことが可能です。また、物流のカーボンニュートラルが課題となる中で、CO2排出量が営業用トラックの11分の1である貨物鉄道が果たせる役割は大きなものがあります」と強調する。さらに、約140カ所のコンテナ貨物駅で構成される緊密な全国ネットワークもJR貨物の優位性の一つだ。

荷主が続々と鉄道シフトを表明

こうした貨物鉄道の強みに着目した荷主企業を中心に、製品輸送の一部を鉄道コンテナ輸送に切り替える動きが加速している。すでに大手飲料メーカーやJA全農などが「2024年問題」をにらんだ鉄道へのモーダルシフトを発表しているが、それ以外にも水面下で数多くの打診が寄せられており、利用区間やダイヤなど具体的な打ち合わせが進んでいるケースも少なくない。「多くの企業が社会課題の解決に取り組む姿勢を積極的に打ち出す中で、これまで鉄道輸送が視野に入っていなかった企業からのアプローチも増えています。商慣行の見直しも進んでおり、品目や区間によってはリードタイムを多少緩和してでも鉄道で運びたいという事例もあります」と荷主企業の変化を指摘する。

とはいえ、「貨物鉄道のことをよく知らない」「アプローチの仕方が分からない」という企業がまだまだ多いことも事実。

そこで同社は昨年秋からウェビナーを開催して、貨物鉄道の仕組みや利用方法などを分かりやすく伝える取り組みに力を入れている。すでに数回のウェビナーを開催したが、多い回では400社程度の企業が参加するなど反応も上々。「まずは貨物鉄道を身近に感じていただき、コンテナ1個からでも利用を開始していただければ」と語る。