DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー10月号の特集は「顧客を読むマーケティング」です。本誌の特集に合わせて、本日から新連載「データが拓くマーケティングの可能性」が始まります。電通BIM(ビジネス・インテリジェンス・モジュール)関連各局がお送りする今回の連載。
 電通BIMとは2012年4月に編成された社内組織。BIMのミッションは、『クライアントのマーケティング活動においてインテリジェンス・メソッドを駆使し、事業目標やキャンペーン目標の達成のためにパートナーとしてお手伝いすること』です。
 クライアント企業それぞれの課題・ニーズに対して、多様かつ高度なビジネス・インテリジェンス機能を核としながら、適切なモジュールとして各部門が連携し、クライアントのマーケティング活動を支援していく、そのようなソリューションの開発と実践に取り組んでいます。
 第1回目は、「BIによるマーケティングの進化」と題して、データ活用がマーケティングにもたらす変化を概観していただきます。


 デジタル化の進展、ソーシャルメディアの普及、デバイスの多様化の中で、消費者の行動様式、購買プロセスは複雑化し、マーケティング活動における企業と消費者との関係は大きく変容しています。

 マーケティング手法や広告手法、メディアが多様になり錯綜する中で、改めて消費者や顧客を理解し、マーケティング活動を有機的に統合化して実効力を高めていくための重要な「資源」として、「ビッグデータ」を含む多様なデータを活用していくことが求められます。

「ビッグデータ」のもつ社会やビジネスに与える影響は様々に語られていますが、マーケティングの視点から捉えると、「ビッグデータ」は顧客あるいは見込み客の行動履歴や購買履歴、あるいはソーシャルメディアを通じた発信データなどのファクトデータです。このデータという「資源」を活用して、マーケティング・プロセスを有機的に統合し、顧客にとって高い価値を生み出していくため、あるいは企業のマーケティング活動全体の顧客対応力を高めていくために、データを「インテリジェンス」に転換し、さらにアイデアを融合させたアクションへと転換していくことこそが、マーケティングの新たな可能性を拓いていくと考えています。

 データの中から、顧客への洞察やマーケティング課題解決、ビジネスの成長のための洞察を導き出す力がビジネス・インテリジェンス

 ビジネス・インテリジェンスという概念は、企業内外の様々なファクトデータを収集・蓄積・分析して、ビジネスの意思決定に有効な知識やインサイトを生み出すことです。これまでもBIツールとして広く浸透してきましたが、データドリブンなマーケティングへの転換が進むなかで、マーケティング・プロセス全般に大きな変革をもたらす根底の仕組みになると考えられます。

 ビジネス・インテリジェンスは、単なるBIツールや手法を超えて、戦略立案→実施→効果測定→分析を通じた課題発見というPDCAサイクルを通じて、ビジネスやマーケティングを持続的に進化させる「組織能力」として捉えるべきです。(図1参照)

 データを活用するためには「組織」「データ基盤」「人材」を整備し、強化していくことが課題となります。データを統合的に活用する上で、これまで多くの企業において、部門毎の「縦割り」という「組織」の壁が存在しました。企業全体でデータという「資源」を活用していく上で、企業全体で統合的にデータを蓄積・活用していく仕組みを構想し、意思決定や業務プロセスを再構築していくこと。そして、企業内外のデータの品質を管理し、分析・活用するためのプラットフォームを構築・整備していくこと。さらに、データを分析・活用できる人材を育成し、体制化していくことが必要になります。社内外のリソースを活用して、データ活用の「組織能力」を高め、新たなマーケティングの仕組みをデザインしていくことが、事業の成長を支えるエンジンとなります。