グローバル時代においては、人口が増えるのみならず、大規模な「人口移動」が起きる。労働力の移動、移民などはすでにさまざまな国で顕著に表れ始めている。これが第2の分野「人口動態と富」、2つ目のメガ・トレンドである。2040年の世界を示すブーズ・アンド・カンパニーの好評連載、第7回。

 

第4のメガ・トレンド
人口移動(Migration)

 グローバルに人口が増えるだけではなく、人口が大規模に移動するというのも、メガ・トレンドの1つである。国をまたがった労働人口の移動には、東西と南北の2つの大きな流れが読み取れる(図表1参照)。途上国の熟練・知的労働者は、米国・欧州を目指して東西移動を行う。高学歴を求めて先進国に留学し、知識や技術を得て先進国でキャリアを積み、豊かな生活を目指そうとする。これに対し、単純労働者は比較的近接する地域で職を求めて、たとえばオーストラリア、南アフリカ、サウジアラビアなどを目指して南北移動を行う。これらの動きは、人口移動の出発地であった南米、アフリカの各国が富の再分配により豊かになることで、2025年に向けて少しずつ減速していく傾向にあるが、止まるわけではない。

 この結果、「エスニック・コミュニティ」がさらにグローバル化する。米国の大都市周辺にはチャイナタウンやコリアンタウンのほか、リトルイタリー、リトルインディアなどと呼ばれる街が存在するが、これらを局地的な存在と捉えるのは誤りである。小規模にとどまっていれば観光名所やグルメスポット程度で済むのであるが、ここへの移民者が増加していくと、一定の影響力を持つようになる。多くの先進諸国では、国内に多様性を内包していくことになる。各国内でのマイノリティの比率が上昇することにより、政治的な緊張と変化が生まれる。移民の増加は先進国だけでなく、新興国でも政治的な問題をもたらす可能性があるが、経済成長に必要な労働力確保という観点から移民が拡大する可能性がある。

 また、一国のなかでも都市への人口移動がより大規模に起こり、メガシティがさらに巨大化する。国連などの分析によれば、都市部に居住する人口割合は、1950年には30%(8億人)、現在は約50%(33億人)であった。これが、2025年には57%(45億人)、2040年には人類の63%(50億人超)が都市部に居住することになる。この都市部での人口増のうち、90%以上は新興国・発展途上国で起き、とくにアジアで多くのメガシティが出現する(図表2参照)。

 東京(首都圏)は、現在3,600万人を抱える世界最大かつ最高レベルの効率を持つ突出したメガシティである。第2位のメキシコシティは1,900万人で、19位のイスタンブールまで1,000万人台が並ぶ。東京は2025年においてもほぼ同じ水準の人口を持ち、1位であり続けていることが予想されているが、第2位にはデリー(インド)が2,900万人、第3位はムンバイ(インド)が2,600万人、そしで第5位にはダッカ(バングラデシュ)が2,100万人で躍進する。一方、現在2位のメキシコシティ、第3位のニューヨーク(ニューアークを含む)は、2025年にはともに1,900万人から2,000万人に若干人口を増加させるもの、それぞれ第6位、第7位に後退すると予想される。