先進国の人口が減れば、富の分配の状況も変わる。第2の分野「人口動態と富」、3つ目のメガ・トレンド「富の再配分」は都市型消費者を増やすポジティブな面と、所得格差の拡大などネガティブな面の両方をもたらす。2040年の世界を示すブーズ・アンド・カンパニーの好評連載、第8回。

 

第5のメガ・トレンド
富の再配分(Redistribution of Wealth)

 富の再配分に関しては、ポジティブな側面は新興国における消費者人口の増加というかたちで進展し、ネガティブな側面は新興国内における所得格差の拡大というかたちで発現する。

 2040年には中国のGDPは世界第2位となり、インドも第3位になると予測される(図表1参照)。日本は国全体のGDPではアメリカ、中国に大きく差をつけられるが、1人当たりGDPは2040年となっても高い水準を維持する。富裕度は高いが中規模で低成長な市場ということである。一方の中国やインドは、平均的な富裕度は低いものの大規模かつ高成長の市場ということになる。

 新興国・発展途上国の社会が安定し、経済成長にともなって都市型消費者の中間層人口が拡大する。これに加えて、ボトム・オブ・ピラミッド(BoP)と呼ばれる底辺層の経済力の底上げも起こる。現在、食べるのが精いっぱいというピラミッドの底辺に位置する人口の多くが、今後は中流階級として消費における存在感を増加させる(図表2参照)。とはいうものの、いま新興国で新中間層と呼ばれる層は、年収のイメージとして数十万円程度であり、日本の中流層というイメージに比べて収入が一桁少ない。先進国の消費者を前提として事業を組み立てていた企業が、そのままのイメージでビジネスを展開しようとしても難しい層である。