本誌2013年11月号(10月10日発売)の特集は、「競争優位は持続するか」。HBR.ORGの関連記事の第4回は、「創造的破壊」の一言では表せない競争の現実について。高業績と成長を長期間維持しているのは、シンプルさと集中を実践するごく一部の企業のみであるという。


 自然環境の変化が加速すると、地球上の生物の絶滅速度も加速する。恐竜がそうであり、また氷河期には多数の種が絶滅した。多くの科学者の意見によると、私たちは再びそのような時期に入っているかもしれないという。

 同じことがビジネスの世界でも起こる。そして、いまは明らかにそうした時期に入っており、記録的な数の企業――緩慢であったり、柔軟性に欠けていたり、官僚的であったりする企業――が絶滅しようとしている。

 べイン・アンド・カンパニーで、私は同僚とともに40年間、こうした傾向を追跡してきた。しかし今日ほど、リーダー企業がその地位をすぐに失う時期は見たことがない。銀行上位20社のなかで、10年前のリストにも含まれていたのはわずか7社である。同様のパターンが航空業界でも、通信業界でも、そして他の多くの業界でも見られる。

 ビジネス史研究家は言うかもしれない。このうちの一部は、ジョセフ・シュンペーターが言うところの「創造的破壊」、つまり競争に後れをとった企業が適切に淘汰されただけであると。だが、かつて電子機器やコンピュータ、モバイル通信の有力企業で働いていて、2012年の前半にレイオフされた何万人もの人々に、同じ言葉をかけられるだろうか。

 また、最も早い段階でデジタル写真技術を有していたコダックの株主は、同社の破滅は進化論的には理に適っていると言われて納得するだろうか。あるいは、ハーバード・ビジネススクール教授のジョン・P・コッターの意見に同意し、「自己満足」の結果だと考えるだろうか。ノキアの株主は、同社がスマートフォンの初期の技術を持っていたにもかかわらず波に乗り遅れたことを、「創造的」だと思うだろうか。

 我々は、長期間にわたって業績を維持し、状況に適応していると思われる企業を研究してきた。そして、ある結論に達した。かつて偉大なイノベーターだった企業が滅ぶ原因は、技術や市場の進化よりも、みずからが犯した過ちであったり、意思決定や適応のサイクルが遅かったりする場合が多いということだ。

 恐竜には、急速な変化に意識的に適応する方法がなかったが、企業やCEOには選択肢がある。1つは、焦点を絞って組織をシンプルにすること。もう1つは、頻繁にそうなるのだが、複雑な戦略を追求することだ。それが複雑な組織やプロセスを生み、複雑怪奇な装置のようになったあげく、いきなり音を立てて止まってしまうのだ。

 同僚のジェームズ・アレンと私は、『リピータビリティ』(プレジデンド社、2012年)の中で、このような複雑さこそが「成長を阻止するサイレントキラー」であり、適応能力を抑制する最たるものと説明している。