大好評連載の4回目となる今回は、いよいよビジネスモデル・デザインの実践編。自社のビジネスモデルを新たに考えるにあたり、板橋氏は「まず事業構造の似ている他業界の案件を考えることで、柔軟な発想が生まれる」という。同氏が実際に手がけた事例から、ビジネスモデルのデザイン・プロセスを紹介する。

柔軟な発想を得るためにすること

  これまで3回にわたって「ビジネスモデル・キャンバス」と「ピクト図解」の2つのツールの使い方を解説してきました。いよいよ今回は、実際にビジネスモデルを「デザイン」してみましょう。

 これまで私は、さまざまな企業の新規事業や新商品の開発に関するコンサルティングを行ってきました。それらのビジネスモデルを考えるという段階になって、多くの企業で共通して見られたのが、日常業務のしがらみにとらわれて柔軟な発想が生まれてこない、という悩みでした。
 そこで私は、いきなり自社の課題に取り組もうとしても難しいので、事業構造の似ている他業界の案件からビジネスモデルを考えることを提案しています。そこで発想したビジネスモデル・パターンを「レゴ」ブロックのように組合せ、自社に照らし合わせて考える「アナロジー発想」を行うのです。

 私がコンサルティングを手がけた消費財メーカーA社では、本連載の方法論を使って、実際にビジネスモデルをデザインしました。A社は子ども向け製品を製造・販売する業歴27年の「モノ作り」企業。「クオリティの高い製品を追求する」職人肌の創業者のもと業績を拡大してきました。さらなる飛躍を目指し、培った技術・経営資源をいかした「オフィス向け製品」を開発。ビジネスモデルも刷新したいとのことでした。
 そこで今回は、A社の事例に基づき、具体的な手法をご紹介したいと思います。
 A社では2日間にわたるワークショップを開催し、「ビジネスモデル・キャンバス」と「ピクト図解」を使って、31のビジネスモデル・パターンをつくりました。その際、「事業構造の似ている他業界の案件」として、架空の文房具メーカーB社を設定し、ビジネスモデル・パターンを考えました。そして、それをA社に「アナロジー発想」を行って展開したのです。

 今回(第4回)はこのデザイン・プロセスのエッセンスを抽出して、B社のビジネスモデル・パターンを考えるまでの過程をご紹介します。
 そして次回(第5回)、得られたビジネスモデル・パターンを組み合わせ、A社への「アナロジー発想」を行うステップについてご紹介します。
 

ビジネスモデル・キャンバスで発散し、ピクト図解で収束する

 すぐれたアイデアは、「発散思考」と「収束思考」をバランスよく「反復」・「統合」することで生まれます。まず発散思考で大量のアイデアを出し、その後に収束思考で具体的な内容に絞り込んでいき、さらにこのプロセスを反復して統合する手法がよくとられます。ビジネスモデルをデザインする時も同様で、この2つの思考の組み合わせが重要です。
 ビジネスモデル・キャンバスとピクト図解は、発散思考と収束思考のどちらのツールとしても使えます。どちらを起点にスタートしても構いません。今回は、ビジネスモデル・キャンバスを起点にスタートしました。理由は、9つのブロックが用意されているので、各要素にフォーカスしてアイデアが出しやすいからです【図1】。
 

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【図1】ビジネスモデル・キャンバスで発散し、
    ピクト図解で収束する