コンサルタントとして経営陣と同席するブレグマンは、儀式や報告の場と化した無益な会議をどう変えるのか。彼が示す経営会議の4つの要諦は、経営幹部が果たすべき役割そのものだ。


 昼時が近づき、会議に参加していたCEOと7人の幹部は、見るからにソワソワしている。しかしお腹が空いているわけではないだろう。退屈を紛らわすために、朝からスナックをつまんでばかりいたのだから。

 会議室の前方では、COOがスライドを使いながらプレゼン中だ。議論らしきものはないに等しい。COOはもっぱら説明役で、必要に応じて弁明を挟むだけだった。

 ようやく昼休みに入ると、コンサルタントとして参加していた私をCEOが手招きし、誰もがとうに感じていたことを口にした。「まったく時間のムダだよ」

 経営幹部を一同に集めることは、莫大な資源の投資を意味する。ホテルや食事の費用など些細なものだ。コンサルタントを雇う費用でさえ、高給取りで多忙な経営幹部7~8人を拘束するというコストに比べれば、取るに足らない。

 ところがこういった会議では往々にして、次から次にプレゼンが行われ、それらを参加者は漫然と聞き流すか、テーブルの下でeメールに返信している。幹部が取り上げるべき真に重要な課題が話し合われることは、どれほどあるだろうか。

 これほど優れた頭脳がそろっているからには、幹部会議の焦点は情報のアップデートであってはならない。対話、議論、場合によっては対立が行われるべきで、ただ座って資料を読んでいるなどもってのほかだ。組織にとって最も重要で解決が困難な問題と真摯に向き合い、奮闘するのがリーダーの務めだ。

 そのためにはどうすればよいか。本心を見せ、自己防衛をせず、互いに勇気を持って接する――幹部がそうなるような環境をつくり出すことだ。つまり、自分の弱みをさらけ出し、部門間の壁を打ち破り、ともに難題に取り組み、考え、意思決定ができる場である。

 そんな環境を実現するための第1のルールは、スライドを使わないことだ。スクリーンにスライドが映し出されるや、参加者の関心はお互いから逸れて1人に集中してしまう。それならまだましなほうで、最悪の場合にはスマホに向けられる。どちらも有益ではない。

 スライド禁止ルールが確立されれば、参加者は集中すべき対象を選ばなくてはならない。そこで第2のルールが登場する。私が経営陣の会議をサポートする場合、参加者には以下の4点に焦点を当ててもらう。