気候変動を阻止することは、経済発展にも寄与する――これを自明の理とする米企業が増え、本格的に動き出しているという。各社単独でのサステナビリティ活動にとどまらず、非営利のプラットフォームを介した連携が特徴的だ。本誌2015年1月号の特集「CSV経営」関連記事。

 

 2014年9月23日、企業のCEOたちと世界各国の首脳がニューヨークの国連本部に集結し、国連気候サミットが開催された。このハイレベル協議が開かれる以前から、多くの企業、そしてビジネス界で新たに影響力を持ち始めた人々が気候問題に警鐘を鳴らし、行動を起こそうと呼びかけている。さらに、再生可能エネルギーのコストも急落している。こうした情勢を背景に、私たちは2つの側面で大きな転換を迎えている。気候変動に対する民間セクターの価値観と行動への決意、そしてクリーンエネルギーの経済性――これらがともに変わろうとしているのだ。

 しかし、残る1つの側面――ビジネス界と消費者である市民の関係については、いまだに大きな断絶がある。

 まずは最近ビジネス界で起きた主な出来事を振り返ってみよう。

●6月、元米財務省長官のヘンリー・ポールソンとロバート・ルービン、そして元ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグが主導し、「危険なビジネス」(Risky Business)と題した報告書を発表。気候変動がすでに地域経済に何十億ドルもの犠牲を強いており、今後は数千億ドルに上る資産や土地が危険にさらされると、簡潔かつ力強く訴えている。

●7月、けっして急進的な企業とはいえない食品大手ゼネラル・ミルズが、気候変動を阻止するロビー組織BICEPに参加を表明。ナイキやスターバックス、ベン&ジェリーズなどが参加するこの企業連合は、ゼネラル・ミルズの加盟によって、炭素価格制度などの気候変動政策に対して大きな影響力を持つことになる。続いてケロッグも、9月にBICEPへの参加を正式に表明した。

●9月中旬、経済と気候に関する世界委員会は、「経済発展と気候対策の両立」(The Better Growth, Better Climate)と題した報告書を発表。経済発展を目指すことと、私たちの生活の場と資源基盤(すなわち地球)を守ることは両立しない、という誤解を吹き飛ばした。

●9月22日、複数の有力な自然保護団体と企業団体がさらに連合したウィー・ミーン・ビジネス(We Mean Business)が発足し、報告書を発表。大手企業が気候科学の実態を把握し、それに基づいて行動を起こすことを確認した。その一環として、「RE100」という興味深い活動も始動。保険会社のスイス・リーや食品会社のマース、イケアなどが、100%再生可能なエネルギーを利用するという大胆な目標を掲げている(なお私はRE100の運営委員会のメンバーで、企業の参加を呼びかけている)。

●9月中旬には、世界的な大企業を含む1000社を超える企業と世界73カ国を代表して、世界銀行が炭素価格制度への取り組みを発表した。

●同じく9月、約900億ドルの資産を石油産業で築き上げたロックフェラー兄弟財団が、化石燃料関連企業への投資から撤退すると発表した。