つまらないと感じる作業をした直後には、創造性が高まることが2つの研究によって示された。考えられる理由は、脳が退屈さを紛らわせようとするからだという。退屈な作業の後に創造的作業の予定を入れれば、ひらめきや問題解決を助けるかもしれない。

 

 私はかつて別の職種に就いていた時、四半期ごとの営業会議に出席しなくてはならなかった。その一般的な形式として、まず従業員は飛行機でどこか素敵な場所に飛ばされ、ホテルの大広間に1日10時間閉じ込められる。そして営業やマーケティング、研究開発、法務といった部門のリーダーたちの演説を聞かされる。たいていはモチベーショナル・スピーカーがトリを務め、閉会する。

 真剣に臨もうとどれほど頑張っても、それらは退屈だった。会議の目的は従業員にハッパをかけ、新しいプランを示して営業部を奮起させること、そして売上げを増やす新しく効果的な方法を考えるよう促すことだ。だから退屈を感じたのは恥ずべきことではある。

 唯一の楽しみは夜遅くの夕食だった。話を聞かされ通しの10時間が終わると、同僚と一緒にホテルを抜け出して地元のレストランを見つけ、食事をしながら話に興じる。しかし話の内容は結局、仕事のことになってしまう。それでも、それらの会話は有益だった。問題のあるクライアントへの対処法や、新製品の売上げを増やす方法などについて、新しいアイデアがどんどん飛び出した。昼間の会議よりむしろ深夜の夕食こそ、新しいアイデアや刺激の泉となっていたのだ。

 仕事や会議で退屈することはだれしもあるが、自分が退屈していることを同僚やマネジャーに伝える人はほとんどいない。しかしある程度の退屈さは、実は仕事における創造性を高める可能性がある――こんな事実が明らかになった。最近発表された2つの論文は、退屈を感じることと創造性を発揮することとの相関に注目している。

 1つ目の論文を見てみよう。セントラル・ランカシャー大学のサンディ・マンとレベッカ・キャドマンは、2回の実験を基に、退屈さには創造性を高める効果があることを説明している(英語論文)。最初の実験では、被験者たちを2つのグループに分け、一方のグループには電話帳の電話番号を書き写していくという退屈な作業をしてもらった。もう一方のグループ(対照群)にはこの作業を課さない。その後は被験者全員に、プラスチックのコップを2つ使って何ができるか、思いつく限りの用途を考えてもらった。これは「拡散的思考」――創造性に不可欠な要素で、多くのアイデアを思いつく能力と関連している――を測定するためによく使われる手法だ。

 実験の結果、電話帳を使った作業によって作為的に退屈さを感じさせられた被験者のほうが、2つのコップの用途を有意に多く思いついたのである。