取締役会の女性比率を高めると、どんな影響があるのか。クオータ制導入前後のノルウェー企業の取締役会を対象に行われた定性調査では、コミュニケーションの活性化や意思決定の質の向上など、7つの効果が認められたという。

 

 チームのパフォーマンスは、女性のメンバーを増やすことで高まる。このことはよく知られており、数多くの事例がある。アーンスト&ヤングは2万もの顧客のチームを対象に、社内で非公式の調査を実施した。副会長ベス・ブルックが述べた結果によれば、メンバーの多様性が高いチームは、低いチームと比べて収益性と顧客満足度が高かったという。

 また、アニタ・ウーリー(カーネギーメロン大学テッパー・スクール・オブ・ビジネス助教)およびトーマス・W・マローン(MITスローン・スクール・オブ・マネジメント教授)は、女性メンバーの数を増やすとチームの集団的知力も高まることを明らかにしている。

 しかし企業の最も重要なチームの1つ、取締役会に関してはどうだろうか。米国では女性役員の比率は平均16%程度で頭打ちしており、政府も企業も改善にあまり熱心ではない。

 女性役員の比率を増やす方法として、一定比率を義務づける「クオータ制」を導入すべきかについては賛否が分かれている(ある調査によれば、男性の賛成割合が低い)。しかし、女性比率40%を義務づけているノルウェーの事情に目を向ければ、なぜ取締役会に「少なくとも3名」の女性を迎えることが重要なのかを知る手がかりが得られるはずだ。

 男女比率と財務業績に関する研究はまだ緒に就いたばかりだが、非営利の調査機関カタリストは、取締役会および最上層部の女性比率と、ROI(投資利益率)およびROE(株主資本利益率)の間に強い相関関係を見出している(英語記事)。女性が取締役会の内部構造を変えるうえで果たす重要な役割について、少しずつ明らかになってきた。

 ヨーク大学オズグッドホール・ロースクールのエアロン A. ディア准教授は、2015年出版のChallenging Boardroom Homogeneity: Corporate Law, Governance and Diversity執筆の過程で綿密な調査を行った。ノルウェー企業でクオータ制の導入前と導入後に役員に就任した23名の男女について、インタビューに基づく定性調査を実施。目的は、クオータ制の実質的な意味合いと影響を役員の観点から理解することだ。

 取締役会の組織風土、意思決定、ガバナンスのアプローチなどがどう変わったのか。ディア教授はガバナンスにおける人的要素に焦点を絞り、いくつかの観察結果を報告している。そこにはおなじみの内容もあるが、意外なものもある。

 女性は取締役会に――そして意思決定において――男性役員とは異なる視点や経験、切り口、見解をもたらすことが多かった。

 インタビューによれば女性役員は男性よりも、検討されている議題を質問によって深く掘り下げる傾向があり、それによってチーム内の議論の密度が濃くなったという。ほとんどの女性は浅い知識をひけらかすことにあまり興味を示さず、十分に理解できていないことについては意思決定を嫌がる傾向が見られた。また、メンバー間での関わり方も男性とは異なり、他の人々の意見を求め、会議室にいる全員に議論に参加するよう促す場合が多かった。