社会人の目でチェックし
受験生にアドバイスを

 ところで、受験生にとって人気のある大学とは、どんな大学だろうか。
大学通信が全国の進学校を対象に調査したところ、「就職に有利な大学」が70.5%と、トップになった。

「昨年までは、『自分のしたい勉強ができる大学』がトップでした。 いよいよ就職が大学選びの主役になったと、少なからず衝撃を受けています」と、安田常務。
「景気の影響で、学生の就職難が伝えられます。このため、受験生も、その親も、大学の出口、つまり就職に関心を向けるのでしょう」と分析する。

 もちろん「自分のしたい勉強ができる大学」かどうかも、依然として大きな割合を占める。志望校選びに学部・学科・研究内容を重視するという回答も6割を超えている。

一方、自宅から通えることを重視する傾向が強いこともうかがえる。安田常務は、「不況になると、地元志向、安全志向が強まります。下宿代がかからず、浪人せずに進学できる大学を目指すのです」と説明する。

 じつはこれらの傾向に、落とし穴が潜んでいる。ただ就職だけを考えているのでは、実り豊かな学生生活を送れるとは限らない。

「大学は就職予備校ではありません。自発的に幅広い教養や豊かな専門知識を習得するサポートを行ってくれるのが大学です」と、安田常務も注意を促すところだ。

 自宅通学にとらわれることも、可能性の芽を摘むことにつながりかねない。 浪人回避もまたしかり、である。こうしたいわばご都合主義的な大学選びが、近年問題の大学中退率増加の原因の一つとなっていることは否めない。

 安田常務は、「より広い視野をもって大学を選ぶことが大切です」と力説する。

たとえば、新設の学部・学科は、その大学の既存の理念や実績に加えて最先端のカリキュラムを整えている。

 いわば旬のものが学べるし、教員も厳選されていると期待できる。
そうした場で、どんな人材を育てて、どういった世界へ送り出すことを想定しているかをチェックしていく。

 オープンキャンパスなどの催しには、親も一緒に出かけて、効果を上げる教育を期待できるのか、それが子どもの適性や興味にかなうのかを、社会人としての視点で見極めてアドバイスを送るのが望ましい。

「大学研究には、親もとことん力を尽くすべきです」というのが、安田常務の考え方だ。「多くの判断材料を提供したうえで、受験先の決定は子どもに任せてください。自分で決めたことには責任を持ってやり通すと見込めるからです」。

 学費などに心配がある場合は、「直接大学に相談するのがお勧めです」(安田常務)。どの大学も奨学金などの給付制度を充実させている。制度利用には独自の条件や基準があるので、あらかじめ利用の可能性について知っておけば、選択肢がより広がることだろう。

 安田常務は「大学でしっかりと学ぶためには、学力も重要です」とも語る。受験で要求されるよりも高いレベルの学力がなければ、大学での学びについていけないこともある。

「大学研究と学力向上の両輪が、学生生活を実り豊かなものにするはずです」と結んだ。

週刊ダイヤモンド」12月4日号も併せてご参照ください
この特集の情報は2010年11月29日現在のものです