世界的な不況をものともせず、GAPを抜いて売上高世界1位のアパレル企業に飛躍したインディテックス社。同社の人材開発の責任者として、「ZARA」をはじめとする10のブランドを手がけたヘスス・ベガ氏が、快進撃の舞台裏を明かす。ヘスス氏が語る、社員やお客を虜にして離さない「セクシー・カンパニー」の真髄とは?(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)

ヘスス・ベガ・デ・ラ・ファジャ(Jesus Vega de la Falla)/1965年生まれ。スペイン・マドリッド出身。法学位とMBA-IESEを取得後、ヒューレット・パッカード、サンタンデール・セントラル・イスパノ銀行を経て、インディテックスに入社。グループで「ZARA」をはじめとする10ブランドの人材開発のマネージング・ディレクターを務めた。現在は、リテール・コンサルティング会社・Fansipan(ファンシパン)のCEOを務める。また、小売、ファッション、コミュニケーション分野で多数の企業顧問・ディレクターを務めたり、執筆活動や講演も行なうなど、精力的に活動している。

――ファッションブランド「ZARA」を統括するインディテックス(Inditex)は、世界60ヵ国以上に3500を超える店舗を持ち、GAPを抜いて売上高世界1位のアパレル企業に飛躍した。大不況の影響で、世界の企業は苦しい経営を続けている。ようやく景気回復の兆しが見え始めた日本でも、消費はまだ盛り上がりを見せていない。そんな経済状況にもかかわらず、インディテックス社はどうやって成長を続けているのか?

 経済危機に見舞われても、アップルやスターバックスのように成長を続けている企業は、世界にたくさんある。インディテックスもその1つだが、よく注目されるのは同社のビジネスモデルだ。

 デザインから物流に至るまで、一貫したシステムを確立しており、お客が求める新しいデザインの服を、どこよりも安く、早く店頭に並べることができる。このビジネスモデルは、ファストファッションの代名詞となった。

 しかし、本当の成功の秘密は企業文化にあると私は思う。ZARAの現場で働く人々は、「どうしたらお客にもっと喜んでもらえるか」「お客が最も欲しがるものをいかに提供するか」と常に考え、またそのノウハウを身につけている。これこそが、何よりの強みである。

 安くて高品質のブランドを手がけている上に、視点がお客に向いているという意味では、「ユニクロ」を展開する日本のファーストリテイリングも一緒だ。足もとでは不況の影響もあるかもしれないが、こういった企業は必ず成長を続けていくだろう。