2015年1月に現役世代の高額療養費が見直され、2016年4月には入院時の食事療養費の値上げ、紹介状なしで大病院を受診したときの定額負担の義務化など、ここ数年、医療費の負担増が相次いでいる。
「医療費の負担増はやむなし」という流れのなかで、最後まで守られてきたのが高齢世帯だ。
高齢世帯のおもな収入は公的年金で、現役世代に比べると相対的に所得は低い。その一方で、病気やケガをして医療を必要とする機会は増える。こうした高齢者特有の事情を考慮して、70歳になると医療費の自己負担は現役世代に比べると低く抑えられてきた。
これまで何度も引き上げの機運は起こったものの、高齢者の医療政策は時の政権の先行きを左右するため、長く据え置かれたままになっていたのだ。
だが、2014年度の国民医療費が40.8兆円となり、過去最高を記録。2015年度は41.5兆円(概算医療費)となる見込みで、3分の1は高齢者の医療に費やされている。
現役世代の健康保険から支払う高齢者医療への拠出金が年々増加していることもあり、厚生労働省の審議会では高齢者の負担増を容認する声が多数を占めるようになってきている。
そのひとつが、これまで据え置かれてきた高額療養費の上限額の見直しだ。たしかに増え続ける高齢者医療費を賄うためには、どこかに財源を求めなければいけない。だが、病気やケガをしたときの自己負担を増やすのは正しい判断なのだろうか。
激変緩和措置で導入された
「通院のみ」の限度額
高額療養費は、医療費が家計に過度な負担を与えないように配慮した制度で、現在、70歳以上の人の高額療養費の限度額は、図のように所得に応じて4段階。現役世代とは異なり、70歳以上は「通院のみ」の上限額が設けられているのが特徴だ。
これは2002年10月に、通院時の自己負担額の月額上限を撤廃し、定率1割負担になったときに設けられた特例で、新制度導入の激変緩和措置として導入された。
「一般」の人の1ヵ月の限度額は、入院のみ、または通院と入院の両方をした場合は4万4400円だが、通院のみの場合は1万2000円になる。