建設機械メーカーによるエコ化商品の開発競争が熱を帯び始めている。
コマツは12月1日、新型のハイブリッド油圧ショベルを発売した。まずは日本で販売し、来年4月以降、世界各国に投入していく。来年度でまずは3000台の販売を目指す。
ハイブリッド油圧ショベルは、作業中に旋回する車体が減速時に発生するエネルギーを電気に変換。それを蓄電・再利用することで、燃料を大幅に減らすことができる。コマツの商品の場合、従来に比べると、燃費を約25%低減できるという。
油圧ショベルの主力商品である20トンクラスでハイブリッド建機を量産しているのは、今のところ、コマツのみ。2008年6月にハイブリッド油圧ショベルを初めて国内販売し、昨年度からは中国でも販売を開始した。
だが、商品価格が従来に比べて3割近く高いこともあり、2年半の累計販売台数は650台にとどまっている。
それでも、今後、大型の油圧ショベルなどを含めて、徐々にハイブリッド化を推し進める方針だ。
背景にあるのは、韓国、中国メーカーの急速な台頭である。いまや世界の油圧ショベル市場の約半分を占める中国では、現地メーカーや、ウォン安で競争力を増した韓国メーカーが、「日本メーカーの2割安」という価格を武器に攻勢をかけている。
こうしたなか、環境対応や燃費のよさなどで差別化を図ることが重要となる。
特に中国のユーザーは、建機の年間稼働時間が日本の2~3倍と長いぶん、燃費効率改善によるコスト削減効果は大きい。
コマツでは現在、中国市場に受け入れられる戦略的な価格を検討中だ。中国で普及すれば、世界的にハイブリッド化の流れが勢いづく可能性もある。
一方、国内の競合他社も相次いで技術開発や商品化に乗り出している。
コベルコ建機は今年1月、8トンと小型ながら、ハイブリッド油圧ショベルを発売した。
キャタピラージャパンでも開発中であり、「数年内にも発売するだろう」と、市場投入の機会をうかがう。
日立建機は来年にも新商品の販売を検討している模様だ。ただし、同社の本命はハイブリッドではなく、電気式。すでに06年にはリチウムイオンバッテリーによる油圧ショベルをメーカーとして初めて商品化ずみ。排ガスが出ず、騒音も低いため、屋内や夜間の作業などにも向く。「4~5年先には電動ショベルの本格普及が始まるだろう」と見る。
他社がコマツにどこまで追随できるかは未知数だが、建機の世界でも、自動車に負けず劣らずエコ化をめぐる技術開発競争が勝ち残りのカギを握りそうだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 松本裕樹)