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本当に温室効果ガスの排出を25%も減らせるのか――地球温暖化対策の重要性は理解しつつ、日本人の誰もが今、その目標値について半信半疑の思いでいるのではないだろうか。具体的に、25%減らすためには何をすればいいのか。25%削減が達成されたとき、世の中はどう変わっているのか。大局的なビジョンと、個々の取り組みの双方を知らなければ、環境ビジネスの新たな潮流は見えてこない。地球環境産業技術研究機構(RITE)の茅陽一・副理事長兼所長に話を聞いた。

CO2排出量25%削減の
ハードルの高さを知る

 日本の温室効果ガス排出量は、2008年のリーマンショック以降大幅に減って、08年度は前年度比マイナス6.2%、90年比ではプラス1.9%になった。
京都議定書で認められている森林吸収と、国や企業が外国から買った排出権などを加えると、基準年比マイナス6%の京都議定書目標をなんとかクリアしている状況だ。

茅 陽一(かや・よういち)
1934年、北海道生まれ。57年東京大学工学部電気工学科卒業。同大学院数物系研究科電気工学・制御工学専攻博士課程修了。東京大学助教授、米マサチューセッツ工科大学講師を経て、78年、東京大学教授。95年より慶應義塾大学大学院政策メディア研究科教授。98年より地球環境産業技術研究機構(RITE)副理事長兼所長。専門はエネルギー・環境を対象とするシステム制御工学。著書に『地球時代の電気エネルギー』(日経サイエンス社)、『低炭素エコノミー』(日本経済新聞出版社)、『CO2削減はどこまで可能か』(慶應義塾大学産業研究所選書)などがある。

 「しかし、今後さらに同様の経済の落ち込みが続くことなど、誰も期待していません。われわれは経済をうまく回しながら、温室効果ガス25%削減という高い目標に向け、削減努力を続けていくことになります。90年比25%削減というのは、05年比に直すと30%削減ということです」(茅陽一氏)

 すでに産業部門における省エネ努力を積み重ねてきた日本では、今後、工場などでの大幅排出削減は見込めそうもない。そこで増加傾向にあるオフィスや家庭など民生部門を省エネしていこうという動きが顕著だが、それも一筋縄ではいかない。

 「たとえば環境省のロードマップ委員会は、20年までに太陽光発電を5000万キロワットに増やすという試案を出しました。これは日本の現在の発電容量である2億キロワットの4分の1に当たります」(茅氏)

 そのうち約半分を一般住宅に割り当てているが、戸建て住宅1軒当たりの屋根面積を30~40平方メートルとすると、1戸の発電量はせいぜい3キロワット程度でしかない。目標達成には1000万戸弱が太陽光発電を導入しなくてはならない計算になる。新築だけではとうてい足りず、既設住宅への設置も必要になるが、既設住宅の場合、屋根の補強工事が必要となり、コスト面で導入は難航するだろう。

 CO2をどれだけ減らそうとするかで、かかる費用が大幅に変わってくることにも注意を払いたい。「ここまで減らす」と決めた目標に近づけば近づくほど、費用が増大していく。その目標ギリギリのコストを限界費用と呼ぶ。

 「麻生政権時の目標である05年比15%削減の限界費用は、トンCO2当たり約2万円でした。現政権の目標値だと、試算した研究機関により開きがありますが、4万~9万円になると考えられています」(茅氏)

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