12月は来年度予算の政府案作りで慌ただしい。菅政権は支持率急落だが、この時期には国会もなく野党から叩かれない。予算案で国民の関心を引きつけられる。

 そこで、菅政権は成長戦略の目玉として、法人税率の5%引下げを固めている。一方で所得税や相続税などで、高額所得者層や資産家を狙い撃ちにした増税を行おうとしている。はたして、今回の税制改正で、菅総理の言うように、雇用や経済成長が改善するのだろうか。

法人税減税はデフレや雇用確保には
ほとんど役立たない

 まず、マクロ経済から見ると、法人税減税は国税ベースで約1兆5000億円程度である。今のGDPギャップは少なくみても25兆円程度であるので、もし法人税減税が丸ごとネット減税であっても、その程度ではGDPギャップは埋まらず、デフレや雇用確保にはほとんど役立たない。

 1兆5000億円の有効需要創出であったとしても、GDP成長率はせいぜい0.3%程度しか上がらない。ということは、最近のオークン係数(失業率1%低下のために必要な経済成長率)は3~4であるので、法人税減税によって低下する失業率は0.1%未満に過ぎず、とても雇用回復にはならない。GDPギャップは残り、長期的な成長経路にも乗らない。この意味で、雇用や経済成長への影響は限定的だ。

 しかも、法人税減税はネット減税ではない。この法人税減税のスタートから、財源論がでていたが、これは成長戦略や雇用の確保といいながら、その裏で財政再建、少なくとも財政悪化にしないとの目標もあったといわざるを得ない。

 一般的に、不況対策として財政支出だけを取り出せば、財政再建とは一時的に矛盾する場面が出てくる。そのギャップを埋めるのが金融政策であるので、それも活用する必要があるが、今の民主党政権では、かつての経済財政諮問会議のような政府閣僚と日銀総裁を含めた場で議論されていないので、マクロ経済政策がバラバラになっている。