リーマンショック以降の不況のあおりを受け、人員削減が進んだ。その結果、1人当たりの仕事量は増え、多くのビジネスパーソンが「時間がない」と嘆いている。そんななか、『○時間熟睡法』や『朝○時起きで、うまくいく』といった“短時間睡眠本”や“朝活本”、そしてセロトニンを論拠とした、“脳とストレス本”などがベストセラーとなっている。

確かに、もはや睡眠時間を削るくらいしか自分の時間を持てないのは事実。だけど、人間、そうそう睡眠時間を削ってしまって、生活に支障は出ないのだろうか?

“短時間睡眠本”や“朝活本”にだまされるな!<br />6時間半未満の睡眠では早死リスクが急増!?<br />“脳科学の最高権威”と“脳科学おばあちゃん”が<br />はじめて明かす、超「朝活」法

12月10日に発売された、『あなたの脳が9割変わる! 超「朝活」法』著者で、脳科学、特に前頭前野の構造・機能に関する世界的権威の久保田競博士(京都大学名誉教授)と、テレビ番組で「脳科学おばあちゃん」として紹介された、妻・カヨ子氏に聞いてみた。(聞き手/フリーランスライター 阿蘭ヒサコ 撮影/堀内慎祐)

丸4日と5時間8分30秒寝ないとどうなる?
断眠実験でわかった眠りの大切さ

“短時間睡眠本”や“朝活本”にだまされるな!<br />6時間半未満の睡眠では早死リスクが急増!?<br />“脳科学の最高権威”と“脳科学おばあちゃん”が<br />はじめて明かす、超「朝活」法くぼた・きそう/1932年生まれ。医学博士、京都大学名誉教授。東京大学医学部、東京大学大学院卒業後、脳研究の第一人者であった時実利彦教授の下で脳神経生理学専攻。オレゴン州立医科大学J.M.ブルックハルト教授に師事。京都大学霊長類研究所神経生理研究部門教授・所長を歴任。世界で最も権威ある脳の学会「米国神経科学会」で行った研究発表は、日本人最多の100点以上にのぼり、現代日本において自他ともに認める「脳、特に前頭前野の構造・機能」研究の最高権威。前頭前野の研究以前は断眠実験を行うなど、10年以上睡眠の研究者としても活躍。46歳からジョギングを始め、2年間で23kgの減量に成功。自身のジョギング体験を脳科学的な見地から考察した『ランニングと脳』(朝倉書店)はロングセラーとなり、“走る大脳生理学者”として注目を浴びる。朝4時半起きで仕事をする「朝活」を50年以上実践。ジョギングは30年以上、毎日続けている。著書に『バカはなおせる』(アスキー・メディアワークス)、『天才脳をつくる0歳教育』(大和書房)、『育脳家族』(NTT出版)など多数。妻はテレビ番組で「脳科学おばあちゃん」として話題となったカヨ子氏

――競先生は、前頭前野の研究をされる前は、睡眠と脳の関係についてご研究されていたんですよね。

 そうです。10年くらいやってました。1960年代には、あるテレビ局からの依頼で「断眠実験」をしたこともあります。当時美大生だったH・Mくんに協力してもらって何時間起きていられるのか、を記録するのです。2日くらいは自力でも起きていられるのですが、3日目以降になると、自分の力だけでは起きていられなかったですね。結局「101時間8分30秒」の断眠記録となりました。

――丸5日弱! すごいですね。それだけ起きていると人間はどうなるんでしょうか?

 3日目あたりから、「東京タワーに人が上がっている」などと言い出しました。幻覚が見えたのでしょう。このあたりから精神状態がおかしくなります。そして食欲は増し、体重は3kg増加しました。H・Mくんには辛い思いをさせてしまいました。実際、断眠を拷問の一種として利用していた国もあったようです。

 でも、この実験は、逆に言うと、人間がいかに日々の睡眠で、健康な心身を保っているか、ということを証明したことにもなりました。