不況下ですっかり定着した感のある「巣ごもり消費」。そんな消費者の潜在ニーズを取り込んで活気を取り戻しつつあるのが、宅配サービスを手がける業者たちだ。とりわけ成熟して久しい外食業界にとって、宅配ビジネスの“伸びしろ”は魅力的に映るはず。日本マクドナルドをはじめ、宅配に参入する企業が増えている。しかし宅配市場には、多くのビジネスチャンスが埋もれている一方、業者が克服しなければならない課題も多い。盛り上がる宅配ビジネスの現状をレポートする。(取材・文/友清 哲、協力/プレスラボ)

「巣ごもり消費」で息を吹き返す外食産業
日本マクドナルドまで宅配ビジネスに参入

 「懐が寂しいから、極力おカネを使いたくない」「外出するとムダ遣いしてしまうし、面倒くさいから、食事や買い物はできるだけ家で済ませたい」

 若者を中心にすっかり定着した感のある「巣ごもり消費」。この言葉が世に浸透したことは、長引く不況の象徴的な現象といえる。外出せずに食事や買い物を家で済まそうとするトレンドにより、街の小売店に閑古鳥が鳴く一方、楽天をはじめとする通販事業者が大きく売り上げを伸ばしたのは、記憶に新しい。

 そんな不況の只中において、宅配サービスを手がける業者が活気を取り戻しつつあることを、ご存知だろうか?

 宅配サービスと言えば、これまでは新鮮な食材を配達する生協や、料理の配達を専門に行なうファーストフード業者などが主流だった。ピザハット(日本ケンタッキー・フライド・チキン)、ピザーラ(フォーシーズ)、ドミノ・ピザなどの宅配ピザ、銀のさら(レストラン・エクスプレス)などの宅配寿司、上海エクスプレス(ビーデリサービス)などの宅配中華・洋食料理などが、広く知られている。

 この宅配サービスは、そもそも「コスト効率が悪いビジネス」と指摘されることも多かった。業態による差はあったものの、世界的に原材料価格の高騰が続いたサブプライムショック以前、多くの業者が高止まりする人件費、原材料費、燃料費の「三重苦」に苦しんで、一時利益を大きく減らした。