日中の通商摩擦の行方が不透明な現状に、各メーカーの歯がゆさは募るばかりだ
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 レアアース(希土類)だけではない。粉ミルクでも中国との通商摩擦が顕在化している。

 2010年4月、日本で発生した口蹄疫の伝播を防ぐため、中国政府は日本産粉ミルクの輸入を中止した。9月中旬にいったんその解除を宣言したものの、関係者によると、いまだ税関で差し止められているという。中国では08年のメラミン事件以来、粉ミルク市場の約70%を外資が占め、外資主導で価格をつり上げていることなどが、政府の懸念材料となっていた。

 明治乳業、森永乳業、和光堂など日本の粉ミルクメーカーは、中国市場で売り上げを伸ばしてきた。売り上げ全体に占める海外の比率はまだ10%程度だが、たとえば明治乳業は中国向け製品の生産ラインを新設するなどして急激に拡大する需要に対応した。

 農林水産省の調べでは、09年の日本から中国への粉ミルクの輸出実績は2044トン、金額にして17億4400万円だ。07年と比較すると、約5倍にも増えている。

 事実上の禁輸を受けて、明治乳業は中国向けの生産を停止した。輸出用製品の在庫は余っており、このままでは11年度の生産計画も見直さざるをえない。

 被害は輸出品だけではない。日本を訪れた中国人観光客が購入し持ち帰る“土産”も、中国税関に押収されているというのだ。その額は莫大で、「輸出分に匹敵するほどだ」(業界関係者)という。

 たとえば、和光堂にとって粉ミルクは、全売り上げの約4割を支える重要な収益源だが、「10年の粉ミルクの売り上げは09年実績を10%ほど下回る見込みだ。土産需要の減少が効いている」と、ある幹部は明かす。

 中国との通商リスクは、ここにも存在していた。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 脇田まや)

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